3歳児健診から帰ってきたあと、「様子を見ましょう」の一言がずっと頭に残って眠れない──そんな夜を過ごしている保護者の方に、この記事を届けたいと思います。

私は認可保育園で15年、0歳児クラスから5歳児クラスまで全年齢を担当してきました。発達相談は200件を超え、保護者面談でよく出るのが「健診で何か言われたんですけど、次に何をすればいいかわからなくて」という声です。

結論から言うと、3歳児健診での指摘は「診断」ではなく「入り口」です。そこからどう動くかで、お子さんへのサポートの届き方が大きく変わります。

そもそも3歳児健診で何を見ているのか

母子保健法に基づき、すべての市区町村で実施が義務づけられている3歳児健診。厚生労働省の令和5年度データでは受診率は96.0%と、ほぼすべてのお子さんが受けています。

健診では身体の発育だけでなく、以下のような項目を確認しています。

  • 言葉の発達:自分の名前を言える、2語文以上を使えるか
  • 社会性:ごっこ遊びができる、大人とやりとりできるか
  • 運動面:片足立ち、階段の昇降ができるか
  • 視覚・聴覚:見え方・聞こえ方に問題がないか

ここで重要なのは、健診会場はお子さんにとって「いつもと違う場所」だということです。園で見ている限り、普段はおしゃべりな子でも緊張して一言も話せないことは珍しくありません。健診での姿が、その子の「ふだんの力」とイコールではないのです。

「様子を見ましょう」の3つのパターン

「様子を見ましょう」と言われたとき、実はその中身には段階があります。

パターン1:経過観察(もっとも多い)

現時点では大きな心配はないが、半年〜1年後にもう一度確認したいケース。「気になるけれど、成長の範囲内の可能性が高い」という意味合いです。

パターン2:再検査・発達検査の案内

保健センターや医療機関で、改めて発達検査(新版K式発達検査、田中ビネー知能検査など)を受けることをすすめられるケース。より詳しくお子さんの得意・苦手を把握するための検査です。

パターン3:専門機関への紹介

小児神経科、児童精神科、療育機関など、専門家のもとで継続的に見てもらうことをすすめられるケース。

どのパターンであっても、「何かの診断が下された」わけではありません。お子さんに合ったサポートを見つけるための第一歩です。

指摘後の行動フロー──まず何をすればいいか

健診から帰宅したら、落ち着いてから以下のステップで動いてみてください。

ステップ1:健診の記録を整理する(当日〜翌日)

保健師から渡された資料やメモを確認し、「何を」「どのレベルで」指摘されたか書き出します。口頭で言われたことは忘れやすいので、記憶があるうちに紙に残しておきましょう。

ステップ2:ふだんの様子を記録する(1〜2週間)

自宅や園での様子を簡単にメモします。「2語文が出た場面」「友達とのやりとりができた瞬間」など、できたことも含めて書いておくと、相談時に役立ちます。

ステップ3:相談先に連絡する(2週間以内)

後述する5つの相談先から、お子さんの状況に合った窓口に連絡します。予約が数か月待ちの機関もあるため、「様子を見てから」と先延ばしにせず、まず予約だけ入れておくのがポイントです。

ステップ4:園の先生に共有する

保育園や幼稚園に通っている場合、担任に健診の結果を伝えてください。園での様子と合わせて見ることで、よりお子さんの全体像が見えてきます。私たち保育士にとっても、保護者から共有していただく情報はとてもありがたいものです。

5つの相談先──それぞれの役割を知っておく

「どこに相談すればいいかわからない」という声が保護者面談でも本当に多いので、ここでは主な相談先を5つ、役割とともに整理します。

1. 保健センター(市区町村)

役割:健診のフォローアップ、発達相談、専門機関への橋渡し
特徴:健診を実施した機関なので、お子さんの記録がすでにあります。追加の相談や発達検査を無料で受けられることが多く、最初の窓口として最も入りやすい場所です。

2. 児童発達支援センター

役割:発達に関する相談、発達検査、療育プログラムの提供
特徴:地域の中核的な療育機関です。通所受給者証があれば、原則1割負担で児童発達支援(療育)を利用できます。受給者証の取得には医師の意見書が必要な自治体が多いです。

3. かかりつけ小児科

役割:医学的な評価、専門医への紹介状作成
特徴:普段からお子さんを診ている先生なので、成長の経過を踏まえた判断をしてもらえます。必要に応じて小児神経科や児童精神科への紹介状を書いてもらえます。

4. 子育て支援センター・子ども家庭センター

役割:子育て全般の相談、親子の居場所提供
特徴:発達に特化した機関ではありませんが、地域の情報を幅広く持っています。「まず誰かに話を聞いてほしい」というときに行きやすい場所です。2024年4月から全市区町村に設置が努力義務化された「こども家庭センター」も同様の窓口になります。

5. 発達外来(小児神経科・児童精神科)

役割:専門的な発達評価、診断、療育方針の提案
特徴:発達に関する専門医が在籍し、詳しい発達検査を受けられます。初診まで数か月待ちの場合もあるため、他の相談先と並行して早めに予約を入れておくことをおすすめします。

「指摘されたら発達障害」ではない──保育の現場で見ている現実

ここで、他の子と比べると見落としますが、3歳時点の発達は本当に個人差が大きいということをお伝えしたいです。

私が以前担当した2歳児クラスでは、20人の子どもたちの言葉の発達状況を4段階に分けたことがあります。3語文以上が5人、2語文が8人、単語中心が5人、10語未満が2人。つまり4人に1人以上が2語文にまだ届いていない状況でした。

ある保護者面談で、「みんなは喋ってるのにうちの子だけ」と泣き出したお母さんがいました。クラスの言葉の分散データをお見せして、「言葉の伸びが遅い子の半数は3歳前後で爆発的に伸びる」という現場での実感をお伝えしたところ、半年後にはそのお子さんは2語文を連発するようになりました。後日、そのお母さんから手紙をいただいたとき、「あのとき数字で見せてもらえたから待てた」と書いてありました。

もちろん、早期に支援につなげたほうがいいケースもあります。大切なのは「指摘=異常」と決めつけないことと、「様子を見ましょう=何もしない」にしないことの両方です。

家庭でできる3つの関わり方

専門機関の予約を待つ間にも、家庭でできることはあります。

1. 「実況中継」で言葉のシャワーを届ける

お子さんの行動を横で言葉にしてあげます。「ブロックを積んでるね」「赤いのを選んだんだね」と、やっていることをそのまま実況するだけで十分です。質問攻めにする必要はありません。

2. 生活リズムを整える

朝起きる時間、食事、入浴、就寝の時間をなるべく一定にすることで、お子さんの心と体の土台が安定します。私は朝7時に出勤する生活を続けていますが、自分の息子が小さかった頃も、まず睡眠と食事のリズムを崩さないことを最優先にしていました。

3. 「できた」を一緒に喜ぶ

小さなことでも、お子さんが何かできたときに「できたね」と笑顔で伝えます。靴を自分で履けた、スプーンですくえた──そうした日常の「できた」の積み重ねが、お子さんの自信と次の挑戦への土台になります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 健診で「様子を見ましょう」と言われただけで、療育は受けられますか?

自治体によりますが、診断がなくても「通所受給者証」が発行されるケースがあります。まずは保健センターに相談し、お住まいの自治体の手続きを確認してください。

Q2. 指摘されたことを保育園に伝えるべきですか?

ぜひ伝えてください。園での日常の姿を一番見ているのは担任の保育士です。健診の情報と合わせることで、よりお子さんに合ったサポートが可能になります。

Q3. 発達外来の初診まで半年待ちと言われました。その間は何もできませんか?

保健センターの発達相談や、子育て支援センターの親子教室は予約待ちが比較的短いことが多いです。発達外来の予約と並行して利用することで、待っている間もサポートを受けられます。

Q4. 上の子は何も言われなかったのに、下の子だけ指摘されました。育て方の問題ですか?

育て方の問題ではありません。きょうだいでも発達のペースは一人ひとり異なります。同じご家庭で育っていても、言葉の出方や運動の発達には個人差があるのが自然なことです。

Q5. 指摘された項目が半年後の再検査でクリアされたら、もう心配いりませんか?

多くの場合はそのまま順調に成長しますが、園生活や就学後に新たな課題が見つかることもあります。「心配がゼロになった」と完結させるのではなく、気になることがあればいつでも相談できる窓口を把握しておくと安心です。

まとめ──指摘は「終わり」ではなく「始まり」

3歳児健診での指摘は、お子さんの育ちを支えるネットワークへの「入り口」です。

  • 健診の記録を整理し、ふだんの様子をメモする
  • 2週間以内に相談先へ連絡する(予約だけでも先に入れる)
  • 園の先生にも共有する
  • 家庭では「実況中継」「生活リズム」「できたを喜ぶ」の3つを意識する

園で15年、たくさんの保護者の方と並走してきて思うのは、「不安を抱えたまま一人で頑張ろうとしないでほしい」ということです。相談先は必ずあります。この記事が、最初の一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

参考文献