共通テストまで残り105日──10月の「やることを増やす焦り」が成績を下げる
2027年度の大学入学共通テスト本試験は、2027年1月16日・17日。10月初旬の現在、残り105日だ。
この時期になると、毎年コンサルに共通した相談が届く。「模試を受けるたびに少しずつ点が下がっている」「夏に全科目対策したのに動かない」「先生から『まだ間に合う』と言われたが何をすればいいかわからない」。
18年間、四大進学塾で主任講師を務め、独立後は家庭学習戦略コンサルとして年間200家庭以上と向き合ってきた経験から言う。10月に焦って「やることを増やす」方向に動いた家庭ほど、12月に逆効果が出る。
偏差値表ではなく過去問との相性で見ると、この時期の勝負は「何を加えるか」ではなく「何を捨て、何を守り、何を伸ばすか」の仕分けにある。それを科目単位で設計できるかどうかが、残り100日の成果を構造的に決める。
10月に点が伸びない高3は「3タイプ」に分かれる
模試3回分のデータと学習状況を照合すると、10月になっても得点が動かない受験生には明確なパターンがある。中学受験の指導で体系化してきた「3タイプ分類」を大学受験に応用すると、以下の3つに収束する。
タイプA:知識過剰型(覚えているのに点が取れない)
夏期講習を全コマ受講し、ノートは完璧に仕上がっている。しかし模試を解くと、見たことがある問題なのに点が取れない。インプットは済んでいるが、アウトプット(再生レベル)に達していないのが原因だ。
チェック方法:テキストを閉じた状態で「この単元について説明してみて」と聞く。詰まる箇所が、認識止まりになっている部分だ。
この家庭がやりがちなミス:さらに別の参考書を買い足す。それは逆効果。やることを増やすのではなく、既存のインプットを「再生レベル」に引き上げる練習に集中する必要がある。
タイプB:演習偏重型(問題は解いているのに点が安定しない)
10月になって「過去問しかやっていない」という家庭がある。演習量は多いが、失点パターンを分析せずにひたすら解いているだけで、同じミスが繰り返されている。
チェック方法:直近3回の模試の失点を「知識の抜け・読み間違い・時間切れ」の3分類で確認する。同じ分類の失点が繰り返されている場合、量ではなく分析とルーティン設計が必要だ。
この家庭がやりがちなミス:「もっと演習を積めば安定する」と量を増やす。しかし失点パターンの構造が変わらない限り、量だけ増やしても安定しない。
タイプC:メンタル不安定型(勉強しているのに集中できない)
机に向かう時間は増えているが、ペンが動いていない時間も増えている。「志望校に合格できるか」という不安が思考を邪魔し、実質的な学習密度が低下している状態だ。
チェック方法:3時間勉強しているつもりでも実質1.5時間しかペンが動いていない場合、タイプCの可能性が高い。学習密度の低下が主因であり、勉強時間を増やすことが解決策ではない。
この家庭がやりがちなミス:「頑張れ」と励ます。しかしタイプCの根本は意欲ではなく、目標設定の過大さと達成感の欠如にある。「今日できたこと」を記録することで、自己効力感を取り戻す設計が必要だ。
3タイプが重なっている場合は、A→B→Cの順で対処する。知識の再生レベル化が先に来る。インプットの穴が残ったまま演習量を増やしても、問題は解消しない。
科目別「捨てる・守る・伸ばす」の設計原則
10月以降の学習設計で最も重要なのは、全科目を均等に扱わないことだ。共通テストの配点構造と、各自の現状の得点率を照合した上で3段階に仕分けする。
3つの定義
- 捨てる:その単元への新規投資をゼロにする。「現状維持以上は求めない」と決めること。低頻出・低配点の単元に時間を割くことは機会費用が高すぎる。
- 守る:現状の得点率を維持するための最小限の接触を続ける。得点源の科目や単元は演習をやめると感覚が鈍る。週1〜2回の軽いメンテナンスで維持する。
- 伸ばす:現状60〜70%の得点率で、残り100日で80%以上に届く可能性が高い単元に絞る。ここに集中投下することが最も合格確率を上げる。
捨てる判断の3条件:①志望校・共通テストで配点比重が低い(全体の5%以下)、②現状の得点率が40%以下で改善に3週間以上かかる見込み、③他の科目に充てた場合の期待値が明らかに高い。この3条件が揃う単元は、迷わず捨てる。
英語
共通テスト英語はリーディング・リスニングで200点満点(各100点)。10月時点でリスニングが50点台の受験生は「伸ばす」の最優先対象だ。リスニングは集中的な練習で短期間に得点を伸ばせる科目であり、100日で15〜20点の改善が現実的なレンジにある。一方、リーディングで90点以上取れている受験生は「守る」に移行し、他科目に投資する方が全体スコアへの貢献が大きい。
数学(文系)
文系の数学(数学I・A)は得点率の格差が最も大きい科目だ。現状60点台の受験生は「伸ばす」の候補になる。ただし基礎の穴(特に確率・整数)を10月中に特定し、11月以降は演習に集中する設計が必要だ。一方、現状40点以下の場合は、志望校の共通テスト配点と照合して「捨てるか守るか」を判断する。二次試験で数学を使わない文系私大志望で、共通テスト利用入試だけを狙う場合、数学を「捨てる」判断が合理的なケースがある。
国語
共通テスト国語の現代文は「情報の整理」が問われており、練習の方向性を変えれば改善余地がある。選択肢の絞り込みに「本文の根拠を先に特定してから選ぶ」手順を義務化するだけで、得点率が5〜10%改善するケースは多い。古文・漢文は、現状30点以上取れている受験生は「守る」で十分。20点以下で志望校の配点が高い場合のみ「伸ばす」対象にする。
理科・社会
どの科目を選択しているかと、各科目内での単元別得点率の照合が必要だ。模試3回分の失点分布を「単元×出題タイプ」のマトリクスで整理し、志望校での配点と照合してA象限(頻出×苦手)を最大2単元に絞る。よくある誤りは、苦手な単元を全部「伸ばす」に入れてしまうことだ。3つ以上の単元を同時に「伸ばす」対象にすると、結局すべてが中途半端になる。
10月中に完成させる「3点セット」
残り100日を構造的に設計するために、10月中に以下の3点セットを揃える。
- 科目別・単元別の得点率マップ:直近3回の模試の失点を科目別・単元別に記録し、「捨てる・守る・伸ばす」の3分類で仕分けた一覧
- 11月〜1月の月別重点タスク:11月(伸ばす単元の集中投下)・12月(仕上げと時間管理訓練)・1月(本番調整)の3フェーズで月ごとのメイン作業を決める
- 1日のタイムテーブル:朝のゴールデンタイム(起床後2〜3時間)に論理系科目(数学・国語記述)を配置し、夜は暗記系(社会・生物)に絞る時間帯別設計
この3点セットは、子どもだけで完成させる必要はない。特に「得点率マップ」の作成は、模試の結果を受け取った後に親子で一緒に整理するプロセスが有効だ。
睡眠を削る前に確認すること
10月から12月にかけて、多くの受験生が「睡眠を削って勉強時間を増やす」選択をする。しかし、これは逆効果になるケースが圧倒的に多い。
コンサルで印象に残っているのは、夜12時まで勉強しているのに10月以降も得点が安定しないという高3の相談だ。学習内容ではなく睡眠設計の問題だった。22時以降の勉強は前頭前野が疲弊しており、記憶の定着も思考の質も低下している。就寝時刻を23時に固定し、数学の演習を朝のブロックに移動させただけで、12月の模試で偏差値が3ポイント改善した事例がある。
22時〜2時は成長ホルモンが最も多く分泌される時間帯であり、記憶の固定化も進む。この時間帯の睡眠を削ることは、翌朝のゴールデンタイムを潰すことと同義だ。高校生の目安は6.5〜8時間。削るべきは睡眠ではなく、「机に向かっているが実質作業していない時間」だ。
10月に親がすること・してはいけないこと
親が動く範囲を最初に決める。これが残り100日の家庭環境設計における最重要事項だ。
10月に親がすること(3点)
- 得点率マップの作成補助:模試の結果を受け取ったら、「どの科目の何の単元が弱いか」を一緒に整理する。「なんでこんなに低いの」という評価はしない。事実の確認だけを行う。
- タイムテーブルの共同設計:起床・就寝時刻と科目別の時間帯割り当てを本人と一緒に決める。親が一方的に設計すると機能しない。
- 生活環境の整備:就寝環境(光・温度・スマホ)の管理と朝食のタイミング調整。これは親が担当できる重要な支援領域だ。
10月に親がしてはいけないこと(3点)
- 模試の偏差値・判定への言及:10月模試の数字は母集団の変化でノイズが多い。「大丈夫か」「やばくないか」と言及することは、メンタルを揺さぶるだけで何も解決しない。
- 参考書・科目の追加を親が主導する:「この参考書がいいらしい」という情報提供は10月以降は原則しない。情報の追加は思考を分散させる。
- 他の受験生との比較:「〇〇さんは模試でA判定が出た」という情報は、タイプCのメンタル不安定を悪化させる。
まとめ:残り100日の設計は「引き算」から始める
共通テストまで残り100日の設計で最も重要なのは、「何をするか」より「何をしないか」を先に決めることだ。
志望校選定の段階で勝負は決まっている、とよく言う。これは大学受験でも同じだ。共通テストと二次試験の配点を正確に把握し、自分の得点構造と照合した上で「捨てる・守る・伸ばす」を決める──それを10月中に完成させた家庭が、1月に力を出し切れる可能性が高い。焦りは「何か増やさなければ」という衝動を生む。しかし残り100日、増やすよりも仕分けるほうが、確実に成果につながる。
よくある質問
Q1. 10月の模試でE判定が出ました。志望校を変えるべきですか?
10月の判定だけで変更する必要はありません。この時期の模試は母集団が精鋭化しており(浪人生・推薦不合格者が加わる)、偏差値が構造的に下がりやすい。判断の基準は「共通テストの過去問で目標得点率の70%に届いているか」です。届いていない場合は科目別の「捨てる・守る・伸ばす」を設計し直し、11月末に再判断するのが合理的です。
Q2. 英語だけ点が上がらない場合、どこに原因がありますか?
リーディングとリスニングで失点の分布が異なります。リーディングは「情報処理速度」と「語彙の再生レベル」、リスニングは「音声処理の訓練量不足」が主因のケースが多い。直近2回の模試でリーディング・リスニングそれぞれの得点を記録し、どちらに問題があるかを特定してから対策の方向を決めます。
Q3. 共通テスト対策と二次試験対策、どちらを優先すべきですか?
10〜11月は共通テスト対策を優先するのが原則です。志望校の共通テストボーダーの85〜90%に達していない場合は、共通テスト対策を優先します。足切りに余裕がある状態になって初めて、二次試験対策を本格化する設計が合理的です。
Q4. 「捨てる単元」を決めたことを先生に相談すると止められます。どう伝えればいいですか?
「捨てる」ではなく「優先順位を下げる」という言葉で相談してみてください。得点率マップと志望校の配点を持参した上で「この単元に充てる時間を減らし、代わりにここに集中したい」という提案型の伝え方をすると、多くの先生が柔軟に応じます。感情的な要望よりデータに基づく提案の方が通りやすい。
Q5. 親は毎日の勉強内容を確認した方がいいですか?
毎日の確認は不要です。確認するなら「今日、何を理解できたか」「詰まっている箇所はあるか」の2点に絞ります。週1回15分間の「説明タイム(今週理解したことを親に話す)」が最も効果的な関与の形です。「何時間やったか」という量の確認は実質的な支援になりません。
参考文献
- 独立行政法人大学入試センター「令和9年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト実施要項」(2026年)
- リセマム「【共通テスト2027】実施要項公表…本試験は1/16・17」(2026年6月3日)
- 文部科学省「令和7年度学校基本調査(速報値)」(2025年)
- 河合塾「2026年度大学入学共通テスト問題分析・科目別解説」(2026年)






