小学5年生の通知表を見て「英語の評価基準がよくわからない」と感じたことはありませんか。算数や国語なら「テストの点数」と「ノート」で大体の見当がつく。しかし英語になると、A・B・Cが何を意味するのか掴めない──そんな声を、取材の中で何度も聞いてきました。

2020年度に小学5・6年生で英語が正式な「教科」になり、通知表に評定がつくようになって6年が経ちます。文科省の発表を読み解くと、この間に見えてきた課題は想像以上に構造的です。今回は、学習指導要領の原典をベースに、通知表の3観点評価の読み方と、家庭でできる英語嫌いを防ぐ関わり方を整理します。

小学校英語の「今」──教科化6年目の現在地

まず全体像を確認します。現行の学習指導要領では、小学3・4年生が「外国語活動」(年35コマ・評定なし)、小学5・6年生が「外国語科」(年70コマ・評定あり)として英語を学びます。卒業までに扱う語数は600〜700語。これは以前の中学1年生で学んでいた量に相当します。

注目すべきは、教科化後に「英語が嫌い」と答える児童が増えている点です。文科省の全国学力・学習状況調査によると、小学6年生で英語の学習に否定的な回答をした割合は約31.5%に達しました。教科化前の2013年度調査では23.7%だったため、約8ポイントの上昇です。

私は朝の文科省リリース確認を日課にしていますが、この数字が公表されたとき、正直なところ「教科化の設計に無理があったのではないか」と感じました。しかし原因を掘り下げると、制度そのものより「評価の伝わり方」にボトルネットがあることが見えてきます。

3観点評価を正しく読む──「テストの点」だけでは決まらない

学習指導要領の本文には、外国語科の評価は以下の3観点で行うと明記されています。

観点1:知識・技能

英語の音声や基本的な表現、文構造についての知識を身につけ、「聞く」「読む」「話す(やり取り・発表)」「書く」の4技能5領域で実際に使えるかどうかを見ます。単語テストやリスニングテストの結果がここに反映されます。

観点2:思考・判断・表現

場面や目的に応じて、自分の考えや気持ちを英語で伝えようとしているかを評価します。「正しい英語かどうか」よりも、「コミュニケーションの目的に沿って工夫しているか」が重視される点が、保護者にとって最もわかりにくい部分です。

観点3:主体的に学習に取り組む態度

粘り強く取り組んでいるか、自分の学習を振り返って改善しようとしているかを見ます。授業中の発言・ペアワークへの参加・振り返りシートの記述が主な評価材料になります。

つまり、ペーパーテストの点数は評価全体の一部に過ぎないのです。「英会話教室に通っているのに通知表がBだった」という相談がよくありますが、教室での会話力と授業内の3観点評価は測っているものが異なります。この構造を知っているかどうかで、通知表の受け止め方は大きく変わります。

なぜ「英語嫌い」が3割に増えたのか──構造的な3つの原因

原因1:3・4年生の「楽しい外国語活動」と5年生の「教科」のギャップ

3・4年生の外国語活動は、歌やゲームを通じて英語に親しむ時間です。評定もつきません。ところが5年生になると突然テストがあり、「書く」活動が加わり、通知表に成績が並びます。この段差が「英語=楽しい」から「英語=評価される」への意識転換を強制し、苦手意識の引き金になっています。

原因2:指導体制の現実

文科省の英語教育実施状況調査によると、小学校で英語を指導する教員のうちCEFR B2レベル(英検準1級相当)以上の資格を持つのはわずか約1.5%です。学級担任が授業の約56%を担当しており、専科教員の配置は十分とは言えません。教える側の不安が、そのまま児童に伝わっている面があります。

原因3:家庭での「先取り格差」

英語入試を導入する中学校は2014年の15校から2023年には141校に急増しました。その結果、低学年から英会話教室に通う家庭と、学校の授業だけで学ぶ家庭の間に、5年生時点で大きな経験差が生まれています。「周りはできるのに自分はできない」という感覚が、英語嫌いを加速させます。

家庭で今日からできる5つの関わり方

出版社時代、私は「煽り見出しの方がPVが伸びる」という現実と3年間戦いました。その経験から学んだのは、「中立だが具体的」な情報こそ本当に役立つということです。以下の5つも、特別な教材や高額な投資は不要です。

1. 通知表の3観点を子どもと一緒に読む

「Aが何個」ではなく、「どの観点がBなのか」に注目してください。たとえば「知識・技能」がAで「主体的に学習に取り組む態度」がBなら、授業中の参加姿勢を振り返るきっかけになります。親が評価の仕組みを理解していれば、声かけの精度が上がります。

2. 教科書の音声を「BGM」にする

現在の小学校英語教科書(NEW HORIZON Elementary等)にはQRコードで音声が無料配信されています。食事の準備中や車の移動中に流すだけで、「聞く」力の土台が自然に育ちます。「勉強しなさい」より効果的です。

3. 「書く」は単語の丸暗記ではなく「4線ノート」で慣れる

5年生の「書く」でつまずく子の多くは、アルファベットの大文字・小文字を4線上に正確に書くこと自体に苦戦しています。学校で配られる4線ノートを使い、1日5分、好きな単語を3つ書く習慣から始めるだけで十分です。

4. 「間違えても大丈夫」のメッセージを意識的に

3観点の「思考・判断・表現」では、正確さよりも「伝えようとする姿勢」が評価されます。家庭でも「正しく言えたかどうか」ではなく「英語で伝えようとしたこと自体」を認める声かけを意識してください。

5. 中学英語との接続を見据えて「音と文字の対応」に触れる

小学校英語で最も課題とされるのが、中学校への接続です。中学1年の教科書は「小学校で600語学んだ前提」で書かれています。フォニックス(音と文字の対応ルール)の基本に家庭で触れておくと、中学入学後のつまずきを大幅に減らせます。YouTubeの無料フォニックス動画でも十分に効果があります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 小学3・4年生の外国語活動には通知表の評価はつきますか?

数値による評定はつきません。ただし「記述欄」に活動の様子が書かれる学校が多いです。ここでの前向きなコメントが5年生以降の自信につながるため、内容を確認して声かけの材料にしましょう。

Q2. 英会話教室に通っていれば学校の英語の成績は上がりますか?

必ずしも直結しません。学校の評価は3観点で行われ、「授業中の態度」や「振り返りシートの記述」など、教室外の能力では測れない要素が含まれます。ただし「聞く」「話す」の基礎力が高ければ、授業への積極性が自然に上がり、間接的にプラスになることはあります。

Q3. 英語のテストが返ってきたとき、親はどう声をかければいいですか?

点数だけを見て「もっと頑張りなさい」は逆効果です。「どの問題が面白かった?」「聞き取れた部分はあった?」など、プロセスに焦点を当てた問いかけが効果的です。3観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」は、家庭での声かけが直接影響する領域です。

Q4. 小学校英語の教科書は市販されていますか?

教科書自体は学校で配布されますが、教科書準拠のワークブックは書店やオンラインで購入可能です。ただし、まずは学校の教科書を十分に活用することが優先です。音声QRコードを使い倒すだけでも家庭学習として成立します。

Q5. 2026年以降、小学校英語の制度はさらに変わりますか?

2026年度時点では現行の学習指導要領が継続しています。ただし、次期学習指導要領の改訂に向けた中央教育審議会での議論は進んでおり、デジタル教材の活用拡大や評価方法の見直しが論点に上がっています。大きな変更があれば、文科省の公式発表を確認することをお勧めします。

まとめ

小学校英語の通知表は、テストの点数だけでなく「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で構成されています。この仕組みを保護者が理解しているだけで、子どもへの声かけは確実に変わります。

英語嫌いが3割に増えた背景には、外国語活動と教科のギャップ、指導体制の課題、家庭間の先取り格差という構造的な問題があります。しかし、家庭でできることは意外とシンプルです。教科書の音声を流す、4線ノートで毎日3語書く、間違いを認める声かけをする──こうした小さな積み重ねが、中学校以降の英語学習の土台になります。

参考文献