「うちの子、まだ高1なのに推薦の話なんて早くない?」──そう思っている保護者の方は少なくないはずです。しかし、文科省の発表を読み解くと、2025年度(令和7年度)の大学入学者のうち53.6%が「総合型選抜」または「学校推薦型選抜」、いわゆる年内入試で合格しています。つまり、一般選抜で入学する学生はもはや半数を割っているのです。
私は教育出版社で10年、文科省記者クラブで2年常駐し、大学入試改革の変遷を追ってきました。朝6時に起きて最初にやることは文科省や教育委員会のリリース確認ですが、ここ数年、入試関連の発表で最も目立つのが「年内入試の拡大」です。
この記事では、学校推薦型選抜と総合型選抜の仕組みの違い、国公立・私立別の比率、そして高1からの評定平均の積み上げ方を、一次情報をもとに整理します。
「年内入試」とは何か──2つの選抜方式の全体像
「年内入試」とは、1〜3月に行われる一般選抜より前、主に9月〜12月に合否が決まる入試方式の総称です。具体的には次の2つがあります。
学校推薦型選抜(旧・推薦入試)
- 出願要件:高校の校長推薦が必須。評定平均値の基準(例:4.0以上)が設定されるケースが大半
- 選考方法:調査書+面接+小論文が基本。近年は共通テストを課す大学も増加
- スケジュール:出願は11月〜、合格発表は12月が中心
- 2025年度入学者に占める割合:全体の34.1%(22万1,415人)
総合型選抜(旧・AO入試)
- 出願要件:校長推薦は不要。大学が定める出願条件を満たせば誰でも出願可能
- 選考方法:志望理由書・活動報告書+面接+プレゼンテーション・小論文など。「その大学で何を学びたいか」が最も問われる
- スケジュール:エントリーは夏〜秋、合格発表は11月以降
- 2025年度入学者に占める割合:全体の19.5%(12万6,766人)
この2つを合わせた53.6%が「年内」に進路を確定しています。学習指導要領の本文には「多面的・総合的な評価」の理念が掲げられていますが、入試の現場ではそれが数字として表れてきた形です。
国公立と私立で大きく異なる「年内入試比率」
文科省が2025年11月に公表した「令和7年度国公私立大学入学者選抜実施状況」のデータを設置者別に見ると、年内入試の割合には大きな差があります。
| 設置区分 | 総合型選抜 | 学校推薦型選抜 | 年内入試 合計 |
|---|---|---|---|
| 国立大学 | 7.7% | 12.7% | 20.4% |
| 公立大学 | 6.0% | 26.9% | 32.9% |
| 私立大学 | 22.8% | 38.8% | 61.6% |
私立大学では6割超が年内入試で入学しています。「一般入試で入るもの」というイメージは、少なくとも私立大学に関しては過去のものになりつつあります。
一方、国立大学では依然として8割近くが一般選抜です。ただし、国公立でも年内入試の募集人員は年々増加しており、2025年度は全体の24.3%にまで拡大しています。
2026年度入試の注目ポイント──倍率上昇と制度変更
旺文社の集計(2025年12月24日時点)によると、2026年度入試の学校推薦型・総合型選抜は以下の動きがありました。
- 私立大の志願者:前年比12%増、合格者は3%増 → 倍率は2.4倍から2.6倍へ上昇
- 共通テスト免除方式の総合型選抜:実施大学が116→149校、学部等が410→530に大幅拡大
- 募集人員:学校推薦型2%増、総合型8%増
つまり「門戸は広がっているが、志願者も増えているので倍率は上がっている」状態です。「推薦=楽に受かる」という認識は修正が必要です。
評定平均とは何か──計算方法と目安
学校推薦型選抜で最も重要な指標が評定平均値(学習成績の状況)です。計算方法はシンプルですが、仕組みを正確に理解している保護者は意外と少ないように感じます。
計算方法
高校1年〜高校3年1学期までの全科目の評定(5段階)を合計し、科目数で割った値です。小数第1位まで算出されます。
たとえば、高1で10科目×5回の定期テスト、高2で10科目×5回、高3で10科目×2回あるとすると、高3の時点で評定を左右するテストの大半はすでに終わっています。ここが「高3から頑張る」では遅い理由です。
出願に必要な目安
- 私立大学(中堅〜上位):3.5〜4.0以上
- 難関私立・国公立:4.3以上
- 最難関(早慶上理・旧帝大の一部):4.5〜5.0
大学側の意図はこういう構造です──評定平均は「その科目が得意かどうか」ではなく、「3年間コツコツ学び続けられる人物かどうか」の代理指標として使われています。
高1からの評定平均「積み上げ戦略」──5つの実践ポイント
評定平均は一度下がると取り返しが非常に難しい構造になっています。以下の5つのポイントを、できれば高1の段階から意識してください。
1. 定期テストの「捨て科目」を作らない
評定平均は全科目の平均値です。得意科目で5を取っても、苦手科目で2を取れば平均は下がります。「受験に使わないから手を抜く」は年内入試を選択肢に入れるなら避けるべきです。
2. 高1・高2の成績が「重い」ことを意識する
3年間で計12回程度の定期テストのうち、高1・高2で10回分が終わります。つまり評定平均の約83%は高2までに確定します。高3から挽回する余地は数学的にほぼありません。
3. 副教科・実技科目を侮らない
体育・音楽・美術・情報なども評定平均の計算に入ります。これらは真面目に授業に参加するだけで4〜5が取りやすい科目でもあり、平均値の底上げに貢献します。
4. 提出物と授業態度で「関心・意欲・態度」の評価を確保する
評定は定期テストの点数だけでは決まりません。提出物の期限厳守、授業中の発言、ノートの取り方なども評価対象です。テストで80点と70点の差より、提出物を出す・出さないの差のほうが評定に響くこともあります。
5. 「推薦を使うかどうか」は高3で決めればいい──ただし選択肢は高1で作る
年内入試を受けるかどうかは高3の夏に判断しても間に合います。しかし、その選択肢を持てるかどうかは高1・高2の積み重ねで決まります。5年前、英語民間試験導入の報道が「賛成 vs 反対」の二項対立になった際に原典を読んだところ、論点は教育格差・採点公平性・移行期間と多層的でした。入試改革も同様に、「推薦か一般か」の二者択一ではなく、両方を視野に入れた準備が合理的です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 総合型選抜は「一芸入試」ですか?
いいえ。旧AO入試時代にはその傾向もありましたが、2021年度の入試改革以降、総合型選抜でも何らかの学力確認(小論文・共通テスト・口頭試問など)が必須化されています。文科省の調査でも、総合型選抜入学者の学業成績は一般選抜入学者と同等かそれ以上という結果が出ています。
Q2. 学校推薦型選抜の「校長推薦」はもらえないこともある?
あります。校内の推薦枠に限りがある「指定校推薦」の場合、評定平均が基準を満たしていても校内選考で落ちるケースがあります。「公募推薦」であれば基準を満たしていれば推薦は得やすいですが、合格が保証されるわけではありません。
Q3. 年内入試で不合格だった場合、一般選抜に切り替えられますか?
切り替え可能です。実際に多くの受験生が年内入試と一般選抜を併願しています。ただし、年内入試の準備(志望理由書・面接対策など)に時間を取られて一般選抜の学習が手薄になるリスクはあるため、スケジュール管理が重要です。
Q4. 評定平均が3.5未満でも年内入試は受けられますか?
総合型選抜であれば、評定平均の基準を設けていない大学もあります。ただし、調査書は提出するため成績が低いと不利になることは否めません。学校推薦型選抜は多くの大学が最低基準(3.5〜4.0以上)を設けており、それを下回ると出願自体ができません。
Q5. 親は年内入試の準備にどう関わるべきですか?
志望理由書の内容に口出しするのではなく、情報収集と制度理解が保護者の最も有効な関わり方です。各大学のアドミッション・ポリシーの確認、出願スケジュールの管理、必要書類の把握など、「裏方」としてのサポートが受験生の負担を大きく減らします。
参考文献
- 文部科学省「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(2025年11月26日公表)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1414952_00009.html - 旺文社 教育情報センター「2026年度 学校推薦型・総合型選抜結果レポート」
https://passnavi.obunsha.co.jp/article/exam_analysis/04/ - 河合塾 Kei-Net「拡大する学校推薦型選抜と総合型選抜」
https://www.keinet.ne.jp/exam/basic/structure/recommend.html - 文部科学省「令和5年度 大学入学者選抜における総合型選抜の導入効果に関する調査研究 報告書」(2024年3月)
https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_daigakuc01-000035712_2.pdf
