「1歳半健診で言葉が遅いと言われた。でも次に何をすればいいのか、どこに相談すればいいのかが全然わからない」

保育園での保護者面談で、1歳半健診のあとに不安を抱えたまま来られる保護者が毎年一定数います。健診で「様子を見ましょう」と言われたものの、次の一手が見えず、1〜2か月もそのまま抱え込んでしまっていることも少なくありません。

保護者面談でよく出るのが、「周りの子はもうたくさん話しているのに、うちの子だけ単語が数えるほどしか出ていない」という言葉です。その言葉の裏には、「比べてしまう構造」と「次の動き方が分からない」という2つの困りごとが重なっています。

この記事では、1歳半健診で言語発達について指摘を受けた保護者の方に向けて、指摘の意味・その後の動き方・家庭でできることを整理します。15年間の保育現場と発達相談200件の経験から、「何から動けばいいか分からない」という不安を、一つずつ解消していきます。

1歳半健診で「言葉が遅い」と言われる理由──発語の個人差を現場から見る

まず押さえておきたいのは、発語の発達は月齢の早さよりも個人差の幅のほうがずっと大きいという事実です。

厚生労働省の乳幼児身体発育調査によると、1歳6〜7か月時点で意味のある単語を1語以上話す子の割合は約94%。裏を返すと、残りの約6%は1歳半を過ぎても単語がまだ出ていない状態にあります。1歳半健診が「意味のある単語を3語以上話せるか」を確認する目安を設けているのは、この個人差のばらつきを見逃さないためです。

園で見ている限り、1歳半時点での発語の数は驚くほど幅があります。私が担当してきた1歳児クラス12人では、健診の時期(1歳6か月前後)に10語以上話している子もいれば、指差しと発声だけの子もいました。どちらも、その後の発達の経過の中でそれぞれのペースをもって言葉を育てていきました。

「言葉が出ていないと将来に影響が…」と心配される保護者の方に、保護者面談でいつもお伝えしてきたことがあります。

言葉の発達研究によると、1歳半時点で発語が少ない「レイトトーカー」のうち、70〜80%は4〜5歳までに周囲に追いつくとされています。追いつかない20〜30%のケースについても、早期に適切な支援を受けることで多くの改善が見られます(田中ほか 2023)。

大切なのは、「単語の数」だけで判断せず、コミュニケーション全体を見ること。指差しができるか、大人の言葉を理解しているか(「ちょうだい」で物を渡せるかなど)、アイコンタクトがとれるかが、言語発達の土台として重要な指標です。

「様子見」には3段階ある──指摘の重さを正確に理解する

健診で「様子を見ましょう」と言われると、ほとんどの保護者は「何もしなくていい」と受け取ってしまいます。でも実際には、「様子見」という言葉には3段階の意味があります。どの段階にいるかを理解することが、次の動き方を変えます。

① 経過観察(最も軽い段階)

「半年後の健診でまた確認しましょう」のパターン。発語の数はまだ少ないが、指差しやアイコンタクトなどコミュニケーション全体に問題がなく、発達の流れの中でキャッチアップが期待できる状態です。この場合は専門機関に急いで駆け込む必要はなく、家庭での関わりを少し意識しながら見守る時期です。

② 再健診(中間段階)

「3か月後にまた来てください」「保健センターに相談してみてください」のパターン。発語の遅れに加え、指差しや大人との応答など別の発達項目にも気になる点がある場合。保健センターの保健師さんへの相談を勧められることが多いです。

③ 専門機関への紹介(最も積極的な段階)

「紹介状を書きます」「療育センターに問い合わせてみてください」のパターン。複数の発達項目に懸念があり、専門的な評価が必要とされる状態です。ここで大切なのは、「紹介される=診断がつく」ではないこと。評価を受けることで、その子に合った関わり方が分かることがメリットです。

どの段階であっても、指摘を受けた後に「何もしない」は選択肢にない、と保護者面談でいつもお伝えしています。「経過観察」の段階でも、家庭でできることは必ずあります。

指摘を受けた後の行動フロー──3つのステップで動く

健診で指摘を受けた当日から、次のステップで動くことをお勧めします。

STEP 1: 健診の記録を手元にまとめる(当日〜1週間以内)

健診で言われた内容を記録します。「指差しはできていた・できていなかった」「アイコンタクトへの言及があったかなかったか」「どの程度の言葉数を確認されたか」など、覚えているうちにメモしておきます。次の相談先でこれを伝えることで、情報の精度が上がります。

また、家での子どもの様子を短く記録するのもこの時期に始めましょう。「○○と言った」「指差しで△△を要求した」「大人の言葉に反応して振り向いた」といった具体的な記録が、のちの相談で大きな助けになります。

STEP 2: 保健センターへ連絡する(1〜2週間以内)

最初の一手として最もアクセスしやすいのは、市区町村の保健センター(または子育て世代包括支援センター・こども家庭センター)です。1歳半健診を実施した機関がそのまま相談窓口になるケースが多く、保健師が発達に関する相談に対応してくれます。

電話口では「1歳半健診で言葉のことを言われたのですが、次に何をすればいいですか?」と聞くだけで大丈夫です。他の子と比べると見落としますが、最初の一歩はこれだけでいいのです。次のステップを教えてもらえます。

STEP 3: 園(もしくは子育て支援センター)にも共有する(2週間〜1か月以内)

健診で指摘を受けた場合、保育園や幼稚園の担任にも共有することをお勧めします。園側は日中の様子を詳しく把握しており、「家では言葉が出ているか」「園では友達との関わりがとれているか」といった情報を合わせることで、より正確な像が掴めます。家庭と園が情報を共有していると、変化に気づくのも早くなります。

保育園や幼稚園をまだ使っていない場合は、地域の子育て支援センターへの定期的な参加も、発達の観察と相談の機会になります。

家庭でできる声かけ──言葉を育てる3つのポイント

「何かしてあげたい」という気持ちは自然です。ただ、間違ったアプローチが逆効果になることもあります。保育現場で実際に効果が出た3つの関わり方をご紹介します。

① 実況中継で言葉のシャワーをつくる

子どもが見ているもの・やっていることを言葉にして伝えます。「ワンワンがいるね」「おにぎり、持ったね」のように、動作をそのまま言語化する方法です。

ポイントは一文を短くすること。「あのワンワン可愛いね、白くて大きくて…」は長すぎます。「ワンワン!」「大きいね」のように短い文が子どもの耳に残りやすく、語彙の蓄積につながります。静かに聞いているように見える時期が、実は最も言葉を吸収している時期かもしれません。

② やりとり遊びで「コミュニケーションの型」を練習する

「ちょうだい・どうぞ・ありがとう」の交互のやりとりが、言語発達の下地を作ります。おもちゃを渡し合う、食べ物を分け合うなど、毎日の生活の中でできる小さなやりとりの繰り返しが積み重なります。

言葉が出ていなくても、物を渡す・受け取るという行動自体が「コミュニケーションの型」を体に覚えさせます。家庭でのこのやりとりが、友達関係のリハーサルにもなっています。

③ 言い直しをしない──「拡張」で返す

子どもが「ワンワン!」と言った時、「ワンワンじゃなくて、犬と言いなさい」と言い直させるのはNGです。それよりも「そうだね、ワンワンがいるね」と受け取り、少しだけ豊かな言葉で返す「拡張」の方法が有効です。

間違いを正すより、会話のやりとり自体を増やすことが先です。1歳半の段階では、子どもが「話そうとする」意欲を育てることが最優先です。

相談先マップ──4つの窓口と使い分け

保護者面談でよく出るのが「どこに相談すればいいかわからない」という悩みです。以下に4つの代表的な窓口と、その役割を整理します。

相談先役割アクセス方法
保健センター(保健師) 最初の相談窓口。発達の経過観察と専門機関への紹介。1歳半健診の実施機関がそのまま相談対応。 市区町村の保健センターへ電話で予約。
児童発達支援センター 発達に関する評価・相談・支援プログラム。療育の入口にもなる。診断や障害者手帳は必須ではない。 保健センターから紹介、または直接問い合わせ可能な場合も。
かかりつけ小児科 日常の体調管理と発達の基本的な確認。発達外来への紹介元になることも。 「発達のことで気になることがあります」と伝えると対応してもらいやすい。
子育て支援センター / こども家庭センター 日常的な育児相談。専門職(保健師・社会福祉士など)が常駐することも多い。 地域の子育て支援センターに直接来所または電話。

なお、発達外来(専門の児童精神科・小児神経科)は予約が数か月待ちになることが多いです。「専門機関への紹介が出た」と感じたら、待っている間に保健センターや子育て支援センターを並行利用することをお勧めします。予約が先でも、早めに入れておくことが重要です。

まとめ──「指摘を受けた日」が動き出す日

1歳半健診で言語発達について指摘を受けることは、「今日から何かが始まる」スタートラインです。診断がつくとか、何か深刻なことが確定するということではありません。

保育現場で見てきた限り、指摘を受けた後に早めに動いた保護者ほど、「自分が何をすればいいかが分かってラクになった」という声を口にします。動かないでいると不安だけが蓄積し、子どもの変化に気づきにくくなります。

「1語も出ていない」「指差しがまだ少ない」という場合でも、今日から家でできることはあります。1歳半は「発語が始まる時期」の入口であり、そこから先の1年で大きく変わる子が多い。焦る必要はありませんが、動かない理由もありません。


よくある質問(FAQ)

Q1. 1歳半健診で言葉が出ていない=自閉症ですか?

A. 1歳半での発語の遅れだけで、自閉症などの発達障害を判断することはできません。発語の遅れは発達障害のひとつのサインになる場合がありますが、耳の聞こえの問題、環境、個人差など多くの要因が考えられます。正確な評価には専門の医師による診察が必要です。まずは保健センターや小児科で相談することから始めてください。

Q2. 「様子見」と言われたら何もしなくていいですか?

A. 様子見の段階でも、家庭でできることはあります。実況中継の声かけ、やりとり遊び、言い直しをしないなど、日常の関わり方を意識するだけでも子どもの言語環境が変わります。また、次の健診や相談のために記録をつけておくことも大切です。

Q3. 2歳になっても単語が10語以下です。どこかに相談すべきですか?

A. 2歳時点で単語が10語以下の場合は、保健センターや小児科への相談をお勧めします。発語の数だけでなく、指差しや大人の言葉の理解度も合わせて見てもらうことが重要です。相談先マップを参考に、まずは最もアクセスしやすい窓口に連絡してみてください。

Q4. 保育園に通っているのに言葉が出ないのはなぜですか?

A. 保育園に通っているからといって、言葉が早く出るとは限りません。言語発達は集団環境の刺激だけでなく、耳の聞こえ、神経系の発達、個人の発達速度など多くの要因が絡んでいます。「保育園に通っているのに…」という焦りは不要です。日中の園での様子(友達への関心・コミュニケーション)を担任に聞いてみると、家庭では見えない一面が分かることがあります。

Q5. 健診の結果が不安で、何から始めていいか分かりません。

A. まずは「1歳半健診で言葉のことを相談したい」という一言を、市区町村の保健センターに電話するだけで大丈夫です。複数の相談先に同時に問い合わせる必要はなく、最初の一歩だけ動けば道が見えてきます。


参考文献

  • 厚生労働省「乳幼児身体発育調査(平成22年度)」乳幼児の発育・発達の基準
  • 田中道子ほか『ことばの遅れがある子ども レイトトーカー(LT)の理解と支援』株式会社学苑社(2023年)
  • 国立成育医療研究センター「乳幼児の言語発達と発達障害の早期発見に関する情報」
  • さくらキッズクリニック「1歳半健診で様子見ましょうと言われた方へ」(2026年参照)