FP相談でよく聞かれるのが、「受験費用と授業料はちゃんと積み立ててきたんですが、これで大丈夫ですよね?」という確認です。計算してみると、受験費用30〜50万円も、入学金・初年度授業料も、じゅうぶんに備えができている。ところが、毎月の家計収支に「仕送り」という列が存在していないご家庭が、実は半数以上いらっしゃいます。
うちの長男のとき実際に、受験費用の積み立てと授業料の見通しまでは手帳に書き込んでいたのに、「入学後の生活費を毎月どこから出すか」は完全に白紙でした。子育て家庭のFP歴12年になる今だから言えますが、大学進学後の仕送りは「教育費の第4章」であり、授業料の次に大きな費目です。
大学生の仕送りはいくらかかるのか
全国大学生協連の第61回学生生活実態調査(2025年)によると、一人暮らしをしている学生への仕送り平均は月7万4,652円です。地域別・大学種別でみると、首都圏の私立大学に通う学生の家庭では月9万1,600円に上ります。
| 進学先の目安 | 月額仕送り目安 | 4年間の仕送り総額 |
|---|---|---|
| 地元国公立大(自宅通学) | 0〜2万円 | 0〜96万円 |
| 地方国立大(一人暮らし) | 5〜7万円 | 240〜336万円 |
| 首都圏国立大(一人暮らし) | 7〜9万円 | 336〜432万円 |
| 首都圏私立大(一人暮らし) | 9〜11万円 | 432〜528万円 |
地元国公立で自宅通学なら仕送り負担は軽いですが、首都圏・一人暮らしとなると4年間で400万円超が家計から出ていきます。この金額は、国公立大学4年間の授業料(約214万円)を大きく上回ります。授業料だけ準備して仕送りを計算外にしていると、入学後の毎月の家計が立ちゆかなくなるリスクがあります。
見落としがちな「一人暮らし初期費用55万円」
仕送りに加えて、引越し・入居の初期費用も見落としやすい費目です。
- 新居の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など):約19.5万円
- 家具・家電の購入:約31.9万円
- 引越し費用:約3.9万円
合計すると約55万円が大学入学の直前・直後に一気にかかります。しかもこの時期は、受験料・入学金・前期授業料の支払いと時期が重なります。受験費用口座と生活準備口座を分けずにいると、大学入学の春に一度に100万円以上の現金が必要になる事態が起こります。
高1から備えるFP流3ステップ
結論から言うと家計の見直しが先で、仕送りをいくら出せるかという「器の大きさ」を高1の段階で把握することが最初の一手です。
Step 1:高1春に「仕送りシナリオ3パターン」を試算する
子どもの志望校の方向性がぼんやりと見えてくる高1春に、以下の3パターンで月次収支を試算します。
- パターンA(地元自宅通学):仕送り0円 → 月々の負担増はほぼ授業料分のみ
- パターンB(地方国立・一人暮らし):仕送り月6万円 → 年間72万円の追加支出
- パターンC(首都圏私立・一人暮らし):仕送り月9万円 → 年間108万円の追加支出
この試算を夫婦でテーブルに置くだけで、「今の家計で月いくら捻出できるか」という具体的な会話ができるようになります。Cパターンで仕送り月9万円を出し続けるには、今の固定費をどこかで削る必要があるかもしれません。その「気づき」を高1でつかむことが、高3の春に慌てないための唯一の準備です。
Step 2:教育資金マップに「18歳以降の仕送り欄」を追加する
教育資金マップとは、「誰の・何の費用を・いつ・どこから出すか」を一覧化した家庭内の設計図です。多くの家庭では授業料・塾代・受験費用は書いてあるのに、仕送りの欄が空白になっています。
高1のうちに、18歳〜22歳の月次収支を月単位で書き出してみましょう。授業料の引き落とし月(4月・10月など)と仕送りの毎月振込を並べると、「4月だけ特別に出費が重なる」など、キャッシュフローの波が見えてきます。
このマップをつくると、現在積み立てている学資保険やこどもNISAの出口(いつ引き出すか)も明確になります。授業料口座・受験費用口座・生活準備口座の3分離も、マップを眺めながら判断するのが一番迷いが少なくなります。
Step 3:高2夏に「受験費用口座」と「生活準備口座」を別々に開設する
高2夏が近づいたら、2つの口座を開設します。
- 受験費用口座:受験料×出願校数+入学金×私立出願数(目安30〜50万円)を積み立てる。高2夏から高3の春まで月2〜3万円の自動振替。
- 生活準備口座:一人暮らし初期費用55万円を高2夏〜高3春の18か月間で積み立てる。月3万円強が目安。
この2口座を「仕送り用の月次家計」とは別管理にするのがポイントです。受験費用口座と生活準備口座は一時費用、仕送りは継続費用——性質がまったく異なるため、混在させると「残高があるから大丈夫」という錯覚が生まれます。
仕送りの原資は毎月の給与収入から出す前提で、現役の家計に「仕送り月7〜9万円」が入ったシミュレーションを早めにしておきましょう。そのシミュレーションをして「家計が回らない」なら、今のうちに固定費を削るか、子どもが地元国公立を視野に入れるか、奨学金との組み合わせを検討するか——選択肢があります。高3の春に初めて気づくよりも、高1で気づいた方が選択肢が格段に広いのです。
FAQ:よくある質問
Q1. 子どもが地元の大学に進学してくれれば仕送りは不要ですか?
自宅通学なら仕送りの代わりに「食費・光熱費の増加分」が家計に上乗せされます。月1〜2万円程度の増加は目安として見込んでおくと安心です。大学のお昼代・交通費・スマホ代などを子ども自身に管理させる費目の設計が必要になります。
Q2. 月9万円の仕送りは平均ですか?多い方ですか?
首都圏私立に一人暮らしで通う学生の家庭での平均値に近い数字です(全国大学生協連2025年調査)。住居費が月5.5万円前後かかる都市部ではこの水準になりがちです。生活費全体(住居費・食費・交通費・通信費等)で月13〜14万円が平均で、そのうち仕送りが7〜9万円、残りはアルバイトで補う構成が多数です。
Q3. 奨学金で仕送りを代替できますか?
JASSO第二種奨学金(貸与型)は月2〜12万円の範囲で選択できますが、2026年時点の利率固定方式は2.5%前後です。仕送り月6万円を奨学金で賄うと、4年間で288万円の借入れになります。親の家計負担を減らす一方で子どもの社会人スタートに借金を持たせることになるため、親が出せる額と奨学金額をセットで設計するのがFP的な考え方です。
Q4. 仕送り額は途中で変えられますか?
もちろん変えられます。実際、1〜2年次は親が手厚く出して、3〜4年次はアルバイトを増やして自立を促すご家庭も多いです。「基準額を固定して、足りない分は本人が稼ぐ」方式の方が、子どもの自立心が育ちやすい傾向があります。最初の金額設定を高くしすぎると下げにくくなるので、初期設定は少し控えめにする方が長続きしやすいです。
Q5. 子どもが大学院に進学する場合はどう計算すればいいですか?
大学院は2〜3年追加になります。博士課程に進む場合は研究室のTA(ティーチングアシスタント)や奨学金で生活費を自活するケースも増えますが、修士の2年間は引き続き仕送りが必要になる場合が多いです。大学進学の段階では「4年間は仕送りが継続する」前提で設計し、大学院は本人の状況が見えてから追加で検討するのが現実的です。
まとめ
教育資金の準備というと、どうしても受験費用・入学金・授業料に意識が集中しがちです。でも子どもが大学で一人暮らしをする4年間、毎月7〜9万円が家計から出続けるという現実は、高1の段階から数字として持っておく必要があります。授業料は事前に積み立てられても、仕送りは毎月の収支から出す「継続費用」です。家計に仕送り欄を追加するタイミングが早ければ早いほど、準備の選択肢は増えます。
3ステップのうち、今日すぐできるのは「シナリオ3パターンの試算」です。スマホのメモに3つの数字を書くだけでいい。漠然とした不安より、具体的な数字の方が必ず対処しやすいです。
参考文献・データ出典
- 全国大学生活協同組合連合会「第61回学生生活実態調査(2025年)」 一人暮らし学生の仕送り・生活費データ
- 文部科学省「令和7年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金調査」 授業料・入学金の全国平均
- 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)「奨学金の返還に関するデータ(2026年版)」 第二種奨学金の利率動向





