育休に入ったとき、月いくら振り込まれるかを即答できる夫婦は少ない。計算式は公開されているのに、いざ自分の数字を当てはめると「これで合ってる?」という不安が残る。FP相談でよく聞かれるのが、まさにこの点だ。給付率67%という数字だけが独り歩きして、実際の振込額のイメージが持てていない方が多い。

2026年8月1日から賃金日額の上限が改定された。月収50万円前後の層は受取額の計算に注意が必要だ。ここでは月収30万・40万・50万円の3パターンで、実際の振込額を計算する。

計算の起点は「育休前6ヶ月の給与」──月収そのままを使わないこと

育児休業給付金の基礎となる「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6ヶ月間の賃金総額を180で割って算出する。月給を30で割るわけではない。時間外手当・通勤手当はケースによって含まれ、賞与は含まれない。残業が多い月があれば、賃金日額が高くなる。逆に育休直前の給与が下がっていたなら、その分だけ計算のベースも下がる。

計算式の骨格はシンプルだ。

  • 育休開始から180日(約6ヶ月)まで:賃金日額 × 支給日数 × 67%
  • 181日目(7ヶ月目)以降:賃金日額 × 支給日数 × 50%

2026年8月1日から2027年7月31日の賃金日額上限は16,540円/日に改定された。この金額を超える賃金日額の方は、上限で頭打ちになる。月収換算ではおよそ49万5千円が境界の目安だ(月収 ÷ 30日で単純計算した場合)。

給付金は雇用保険からの支給で非課税、所得税も住民税もかからない。育休中は健康保険・厚生年金の被保険者負担分も免除される。だから手取りベースで考えると、67%という数字より実感は高くなる。

月収30万・40万・50万円別の振込額シミュレーション(2026年8月〜)

2026年8月以降に育休を開始した場合の概算だ。実際の賃金日額は6ヶ月の実支給額から算出するため、下記の数字より多少のズレが出ることがある。参考値として読んでほしい。

育休前の月収(税込) 開始〜6ヶ月
(給付率67%)
7ヶ月目〜
(給付率50%)
備考
30万円 約20万1千円 約15万円 上限未満。通常計算が適用
40万円 約26万8千円 約20万円 上限未満。通常計算が適用
50万円以上 約33万2千円(上限) 約24万8千円(上限) 日額上限16,540円が適用。月収が高くなるほど体感支給率が下がる

月収50万円の場合、賃金日額は約16,667円になるが、上限の16,540円が壁になる。差額は127円/日で、一ヶ月分では約3,810円が支給されない計算だ。月収60万・70万でも上限は同じなので、高収入になるほど「給付率の体感」は下がっていく。

月収30万・40万円の層は上限に引っかからない。社会保険料の免除(健保・厚生年金で月3〜5万円程度)を含めると、手取りベースで元の月収の80〜85%程度に相当するケースが多い。「67%は低い」と不安になっている方も、手取り比で考えると印象が変わるはずだ。

「実質10割」になる条件──2025年4月から始まった出生後休業支援給付金

2025年4月に「出生後休業支援給付金」が創設された。条件を満たすと、通常の育休給付金67%に13%が上乗せされ、合計80%になる。社会保険料免除も合わせると、手取り換算でほぼ100%に近くなる。

対象になる条件は3点だ。

  1. 子の出生後8週間(産後パパ育休の期間)内に取得した育休であること
  2. 父母ともに14日以上の育休を取得していること
  3. 支給対象期間は最大28日間(取得した育休日数のうち上限28日)

父親だけ・母親だけでは「実質10割」にはならない。両親の取得実績が必要な制度設計になっている点が重要だ。

月収30万円の父親が産後パパ育休を14日取得した場合の概算はこうなる。賃金日額10,000円 × 14日 × 80%(67%+13%)= 112,000円(非課税)。2週間の取得でも、実質的な手取り損失はほぼゼロに近い。

うちの長女のとき実際に、夫が2週間の育休を取ったが、当時は出生後休業支援給付金がなく67%のみだった。今の家庭はこの制度があるので、取得計画を立てる前に条件を確認しておいてほしい。

「最初の振込が遅い」問題の正体──2〜3ヶ月後にまとめて届く仕組み

育休に入ったのに1ヶ月経っても振込がない。そういう相談は珍しくない。これは制度の設計上の問題で、「申請が遅れている」ではなく「そういう仕組みになっている」場合がほとんどだ。

申請の流れはこうなる。

  1. 育休開始から約2ヶ月後に、会社(事業主)がハローワークへ第1回目の支給申請を行う
  2. ハローワークが審査・支給決定をする(目安2週間〜1ヶ月)
  3. 会社経由または指定口座に直接振込(2ヶ月分が一括で入金)

初回の振込まで育休開始から2〜3ヶ月かかるのが普通だ。この期間は給付金ゼロで過ごすことになる。育休前に2〜3ヶ月分の生活費を手元に置いておくことが、FP相談での定番アドバイスになっている。

2回目以降は2ヶ月ごとの振込が続く。月ごとではなく「2ヶ月分まとめて」なので、振込月と非振込月が交互にくる点も家計管理で把握しておくべき点だ。

申請は会社任せでいい?──育休前に確認すべき2つのポイント

育休給付金の申請は原則として会社(事業主)がハローワークへ行う。本人がハローワークに出向く必要はない。ただし「会社に任せっきり」にしていると、申請漏れや大幅な遅延が起きることがある。

育休前に確認しておきたいのは2点。

①申請時期の連絡確認:育休開始から2ヶ月程度で、担当者から「申請しました」という連絡が来るかを事前に聞いておく。中小企業では担当者の経験が少なく、申請を忘れたまま半年近く経つケースも実際にある。

②延長時の追加書類:1歳を超えて育休を延長する場合、保育所の不承諾通知書など追加書類が必要になる。延長の手続きは会社側の対応が遅れやすいため、タイムラインを自分でも把握しておくと安心だ。

結論から言うと、家計の見直しが先。育休期間中の月次キャッシュフロー(いつ何円入るか)を育休開始前に一度シミュレーションしておくと、給付金の入金が遅くなっても焦らずに動けるようになる。

FAQ

育児休業給付金の計算に賞与は含まれますか?

含まれません。育休給付金の基礎となる「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6ヶ月間の通常の賃金合計を180で割った値です。賞与(ボーナス)は対象外です。賞与の割合が大きい方は、実際の月額支給額が月収から想定するより低くなることがあります。

パートタイム・アルバイトでも受け取れますか?

雇用保険に加入していれば受け取れます。ただし「育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること」という受給要件があります。短時間勤務の場合は加入状況と勤続期間を会社の担当者に確認してください。

育休中に副業(フリーランス)収入がある場合、給付金に影響しますか?

副業の事業収入(フリーランス等)は原則として育休給付金に影響しません。ただし、育休中に元の勤務先から一定額以上の給与支払いがあると給付額が減額される仕組みがあります。勤務先からの支払いが生じる場合は確認が必要です。また、就業規則で副業が禁止されている場合は会社との関係で別の問題が生じます。

育休給付金は確定申告が必要ですか?

不要です。育休給付金は雇用保険からの給付で非課税のため、所得税も住民税もかかりません。確定申告の収入欄に育休給付金の額を記載する必要はありません。育休中に他に収入がある場合はその分について確認が必要ですが、給付金自体は申告不要です。

月収50万円以上でも育休取得の経済的メリットはありますか?

あります。給付金は上限で頭打ちになりますが、社会保険料の免除は標準報酬月額に比例して大きくなるため、高収入の方ほど免除額の絶対値も増えます。給付金約33万2千円+社会保険料免除分(月7〜8万円程度)を合わせると、月収ベースで70〜80%近くが確保できるケースもあります。上限があるからといって取得を後回しにする必要はありません。

参考文献