「4月から給与明細の健康保険料が少し増えた気がする」「これが“子ども・子育て支援金”? うちは児童手当をもらっているけれど、結局プラスなの?」。
FP相談でよく聞かれるのが、この「差し引きでいくらなのか」という質問です。ニュースでは制度の全体像や平均額ばかりが流れ、自分の家庭に当てはめた数字は意外と見つかりません。この記事では、こども家庭庁の公表資料にある数字だけを使い、計算式を隠さずに「引かれる額」と「増えた額」を並べます。
結論:引かれる額は月数百円、増えた額は家庭の構成で大きく変わる
先に整理すると、次の3点です。
- 令和8年度(2026年度)の被用者保険の支援金率は0.23%。標準報酬月額に掛けて、本人と事業主が半分ずつ負担します。
- 本人分の月額目安は、年収200万円で192円、400万円で384円、600万円で575円、800万円で767円、1,000万円で959円です(こども家庭庁の年収別モデル試算)。
- 児童手当の拡充(2024年10月分〜)で増えるのは、主に「高校生年代がいる家庭」と「第3子以降がいる家庭」。ここに当てはまらない家庭は、支給額は変わりません。
つまり「増えた家庭」と「引かれるだけの家庭」に分かれます。結論から言うと、家計の見直しが先で、制度の損得を気にしすぎるより、自分の家庭の数字を一度出しておくことが大切です。
子ども・子育て支援金とは:いつから、誰が、どう払う
子ども・子育て支援金は、児童手当の拡充などの少子化対策の財源として、医療保険料に上乗せして集める仕組みです。こども家庭庁の資料では、令和8年4月分の保険料から拠出が始まり、被用者保険では5月の給与から天引きされると説明されています。
被用者保険(会社員・公務員)の計算式
支援金額(月額)=標準報酬月額 × 支援金率(令和8年度は0.23%)。この全体額を本人と事業主で折半します。年収で近似すると、次のようになります。
- 年収400万円:400万円 × 0.23% ÷ 12 = 約767円(労使合計)→ 本人分は約384円
- 年収600万円:600万円 × 0.23% ÷ 12 = 約1,150円(労使合計)→ 本人分は約575円
実際は標準報酬月額(賞与は標準賞与額)で計算されるため、手取りに近い金額は加入先の保険者の案内で確認してください。ここで示すのは国のモデル試算です。
年収別の本人負担(令和8年度・モデル試算)
| 年収 | 本人分・月額 | 年額の目安(×12) |
|---|---|---|
| 200万円 | 192円 | 約2,300円 |
| 400万円 | 384円 | 約4,600円 |
| 600万円 | 575円 | 約6,900円 |
| 800万円 | 767円 | 約9,200円 |
| 1,000万円 | 959円 | 約11,500円 |
共働きは「2人分」引かれる
見落としやすいのがここです。支援金は被保険者ごとにかかるので、共働きなら夫婦それぞれの給与から引かれます。たとえば夫600万円・妻400万円なら、575円+384円=月959円、年で約1万1,500円です。
自営業・フリーランス(国民健康保険)の場合
国保では、市町村の条例に基づいて世帯の所得などに応じて決まり、事業主負担の仕組みもありません。令和8年度の平均は、被用者保険で被保険者1人あたり月約550円、国保で1世帯あたり月約300円との試算が公表されています。正確な額は、お住まいの市区町村の案内で確認が必要です。
児童手当の拡充:増えるのはどんな家庭か
こども家庭庁の案内によると、児童手当は次のとおりです。
- 支給期間:高校生年代(18歳に達する日以後の最初の3月31日)まで
- 金額:3歳未満は月1万5,000円、3歳以上〜高校生年代は月1万円、第3子以降は年齢に関わらず月3万円
- 支給月:偶数月(2・4・6・8・10・12月)に、前月までの2か月分
- 所得制限:撤廃
「第3子以降」は、上の子を数える範囲が広い点に注意が必要です。18歳年度末を過ぎた後でも、22歳に達する日以後の最初の3月31日までの間で、親に経済的な負担がある兄姉は人数に含めて数えます。この「数え方」は、きょうだいの年齢差が大きい家庭ほど効いてきます。
モデル家庭で差し引き計算してみる
拡充前は、高校生年代は支給対象外で、第3子以降の3歳以上は月1万5,000円でした。それを踏まえた、3つのモデルです。支援金は夫婦の年収の組み合わせで置いています。
| モデル | 児童手当の増加 | 支援金(本人分・年) | 差し引き(年) |
|---|---|---|---|
| A:小学生1人のみ・夫600万円(妻は扶養内) | 変化なし(0円) | 約6,900円 | 約▲6,900円 |
| B:高1と小5の2人・夫600万円 | 高校生分 月1万円×12=12万円 | 約6,900円 | 約+11万3,100円 |
| C:小5・小2・年中の3人・夫600万円 | 第3子 月(3万−1.5万)×12=18万円 | 約6,900円 | 約+17万3,100円 |
うちはモデルCに近い構成です。長男は小5、長女は小2、次女は年中なので、拡充で増えた分は第3子の月1万5,000円。年間18万円です。ただ、夫婦ともに保険料を払っているので、その分は引かれています。差し引きで見ると、増えた金額のほうが大きいのは確かですが、「増えた」と喜んで生活費に溶かしてしまうと、気づいたら何も残らない。そこが怖いところです。
なお、政府は「社会保障の歳出改革などで保険料負担が軽減されるため、支援金による負担は相殺される」と説明しています。ただ、これは制度全体の見通しで、個々の家庭の手取りがどうなるかは、保険料率の動きも含めて自分の明細で確認するのが確実です。
増えた児童手当を「使い道のない現金」にしない3ステップ
長男が公立中学に入った最初の半年で、制服や部活用品、塾の入会金などが重なり、23万円超の出費がありました。このとき痛感したのは、教育費は「入ってくるお金」より「出ていく時期」を先に見ておくと崩れにくいということです。差し引きがプラスの家庭ほど、次の順で動くと再現しやすいです。
- 差し引きを計算する:上の表の式で、自分の家庭の「増えた額」と「支援金の本人分(共働きは2人分)」を出す。
- 増えた分だけを別口座に分ける:モデルCなら年18万円=月1万5,000円。生活費の口座と混ぜず、教育資金用に自動で積み立てる設定にします。
- 特別費の月に当てる:入学・進級の月に集中する出費を、児童手当の偶数月の支給で受ける形にしておく。
逆に、モデルAのように増えない家庭は、年7,000円前後の負担増を「固定費1か所の見直し」で吸収するのが現実的です。通信費や保険の特約など、年1万円ほど削れる項目は見つかりやすいものです。
申請や確認で見落としやすい点
- 高校生年代に入る子がいる家庭は、支給対象に入っているか自治体からの通知で確認する。
- 第3子以降の数え方(22歳年度末までの兄姉)で認定が必要な場合があるため、年の離れたきょうだいがいる家庭は、市区町村の窓口に確認する。
- 給与明細の「子ども・子育て支援金」の表示は、会社によって健康保険料に含まれたまま載ることがあります。保険者の案内も併せて見ましょう。
よくある質問
Q1. 子どもがいない家庭も支援金を払うのですか?
はい。医療保険の加入者全体で負担する仕組みで、こども家庭庁も「全世代・全経済主体で支える」と説明しています。独身や子どもがいない家庭、高齢の方も対象です。
Q2. 年収が高いと負担は増えますか?
被用者保険では、標準報酬月額に一律の率を掛けるので、年収が高いほど負担は増えます。モデル試算では、年収200万円で月192円、1,000万円で月959円です。
Q3. 児童手当が増えていない家庭は損するだけですか?
拡充の対象は高校生年代と第3子以降が中心ですが、児童手当の所得制限撤廃など、対象が広がった部分もあります。損得だけで見ず、まず自分の家庭の差し引きを出すことをおすすめします。
Q4. 実際の金額はどこで確認できますか?
加入している健康保険組合や協会けんぽ、国保なら市区町村の案内です。この記事の数字は国のモデル試算であり、標準報酬月額や賞与の有無で個別の金額は変わります。





