「高校無償化になったから、教育費の支援はもう申請が終わったと思ってた」——FP相談でよく聞かれるのが、まさにこの思い込みです。
2026年4月から高校授業料の所得制限が撤廃されました。多くの家庭が「高校の支援は済んだ」と安心しているかもしれません。でも実は、授業料とはまったく別の、現金が保護者の口座に直接振り込まれる給付金が存在します。
それが「高校生等奨学給付金」。2026年度(令和8年度)からは対象世帯が年収約490万円未満まで大幅に拡大されました。国の予算も前年度の152億円から322億円に倍増しています。
しかも多くの都道府県では8〜9月が申請の締め切り。今まさに、申請期限が目の前に迫っています。知らないまま期限を過ぎるのは、あまりにもったいない。
まず整理:「就学支援金」と「奨学給付金」は別の制度
高校生向けの国の教育費支援制度には、大きく2種類あります。名前が似ていて混乱しやすいのですが、仕組みがまったく異なります。
| 制度名 | カバーする費用 | お金の流れ | 2026年度の対象 |
|---|---|---|---|
| 高等学校等 就学支援金 |
授業料 | 国→学校に直接支給(保護者は授業料を払わない) | 所得制限なし・全世帯 |
| 高校生等 奨学給付金 |
教材費・制服・修学旅行費など授業料以外 | 国・都道府県→保護者の口座に直接振込 | 年収約490万円未満 |
就学支援金は「授業料を国が肩代わりする」制度です。学校への支払いが不要になるため、保護者がお金を受け取る感覚はありません。
一方の奨学給付金は「教材費や制服など、授業料以外でかかる費用を補う」現金給付です。保護者の口座に年額数万円から15万円以上が振り込まれます。どちらも返済不要ですが、申請先・申請期限・対象要件はすべて別です。
就学支援金の手続きをしたから奨学給付金も自動的にもらえる——わけではありません。奨学給付金は別途、都道府県への申請が必要です。
2026年度の大きな変化:「中間層」にも支援が届くようになった
高校生等奨学給付金はこれまで、住民税非課税世帯(概ね年収270万円未満が目安)が主な対象でした。それが2026年度から対象世帯が3段階に拡充されました。
支給額の目安(年額)
| 世帯区分(年収目安) | 国公立高校 | 私立高校 |
|---|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 32,300円 | 52,600円 |
| 住民税非課税世帯(概ね〜270万円) | 143,700円 | 152,000円 |
| 年収目安270〜380万円 | 50,670円 | 50,670円 |
| 年収目安380〜490万円 (2026年度新設) |
38,000円 | 38,000円 |
※年額。第1子・第2子以降で異なる場合あり。正確な額と要件は各都道府県教育委員会でご確認ください。
注目すべきは「年収380〜490万円」の新設区分です。2人の共働き家庭や、育児休業明けで収入が戻り切っていない時期の家庭など、これまで「うちには関係ない」と思っていた層が初めて対象になります。
年収の判定は「保護者全員の市町村民税所得割額の合算」で行われます。給与収入の額面がそのまま使われるわけではなく、扶養控除や各種控除が影響します。ボーダーライン付近の家庭は、まず都道府県窓口で確認する価値があります。
申請は「都道府県」が窓口——9月が締め切りの地域が多い
この制度の注意点のひとつが、申請先が都道府県ごとに異なることです。文部科学省が骨格を作り、実際の運用は各都道府県が担っています。
申請期限も都道府県によって異なりますが、8〜9月が締め切りの地域が多い傾向があります。2026年度では栃木県の私立分が9月11日、静岡県の国公立分が8月21日など、すでに締め切りを過ぎた地域もある一方、9月中旬〜下旬が期限という地域もあります。お住まいの都道府県の状況を今すぐ確認してください。
基本的な申請の流れ
- 都道府県の教育委員会ウェブサイトで2026年度の要件・期限を確認
- または、お子さんの学校の事務室に問い合わせ(学校経由で申請できる場合が多い)
- 必要書類(住民税課税証明書など)を準備して申請
- 審査後、保護者の口座に直接振込
学校の事務室に聞くのが最短ルートです。都道府県の担当窓口よりも、在籍校の事務が最新情報を把握しているケースも多くあります。
なお、年度の途中で離職・離婚・疾病などによって家計が急変し、住民税非課税相当になった場合には「家計急変世帯」として年度途中の申請が認められる制度もあります。申請期限を過ぎてしまった方も、まず問い合わせてみてください。
FP相談で見た「申請漏れが起きやすい3パターン」
FP歴12年、1500件以上の相談を受けてきた中で、この給付金を申請できていないケースには共通パターンがあります。
パターン1:「うちは対象外」と思い込んでいる
「住民税非課税じゃないから関係ない」と最初から諦めているケースです。2026年度の拡充で年収490万円未満まで対象が広がったことを知らない方が非常に多い。世帯収入が450万円の共働き家庭でも、対象に入る可能性があります。
FP目線で見ると、「どうせもらえない」という思い込みで申請しないのが一番もったいないパターンです。まず要件を確認してから判断してください。
パターン2:就学支援金の手続きで「終わった」と思っている
「授業料の無償化は学校から案内が来たので手続きした」で完結してしまっているケースです。就学支援金(授業料)と奨学給付金(授業料以外の費用)は別の制度・別の申請で、案内が別々に来ます。授業料の手続きをしたからといって奨学給付金が自動的に支給されることはありません。
パターン3:どこに問い合わせるかわからず後回しにしてしまう
「都道府県って言われても、どの部署に聞けばいいの?」と迷って先送りにするうちに期限が来てしまうパターン。結論から言うと家計の見直しが先というのが私のいつもの口癖ですが、この制度については「結論から言うと、まず学校の事務室に電話する」が最短ルートです。「奨学給付金の申請はどこに問い合わせたらいいですか」の一言で動けます。
うちの長男のことを考えながら、改めて整理した
うちの長男はまだ小学5年生ですが、5年後の高校入学を見据えて、私自身も今年この制度を改めて整理しました。「うちの長女のとき実際に」小学校入学の費用を調べたときに感じたのと同じで、日本の子育て支援制度は「知っている人が得をする」設計になっています。制度は使ってなんぼ。情報を持っているかどうかで、家計への影響が数万〜十数万円単位で変わります。
年収490万円というのは、共働き世帯でも十分入り得る水準です。「うちは違う」と決めつける前に、一度確認してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 就学支援金の申請をしたら、奨学給付金も自動でもらえますか?
いいえ、自動ではありません。 就学支援金と奨学給付金はまったく別の制度で、申請先・申請時期・対象要件がすべて異なります。就学支援金の手続きをしていても、奨学給付金は別途申請が必要です。
Q2. 世帯年収500万円ですが、対象になりますか?
現行制度では年収約490万円未満が対象ですが、「年収」は給与の額面ではなく「保護者全員の市町村民税所得割額の合算」で判定されます。扶養控除などによって実際の判定額が変わるため、年収が500万円前後の家庭でも対象になることがあります。都道府県窓口または学校事務室にご確認ください。
Q3. 通信制高校や私立高校でも申請できますか?
はい、私立高校・通信制高校も対象に含まれます。 ただし、支給額が学校の種類によって異なります(住民税非課税世帯は私立が年額152,000円、国公立が143,700円)。詳細はお住まいの都道府県教育委員会の案内をご確認ください。
Q4. 年度途中に家計が急変した場合は申請できますか?
多くの都道府県で家計急変世帯向けの追加申請が認められています。 失業・離婚・疾病などで住民税非課税相当になった場合、通常の申請期限後でも申請できる場合があります。学校の事務室または都道府県窓口に問い合わせてください。
Q5. 支給された給付金は確定申告で申告しますか?
申告不要です。 高校生等奨学給付金は非課税の給付金です。所得として申告する必要はなく、住民税の計算にも影響しません。
まとめ:9月中に確認したい3つのこと
- 対象区分の確認——2026年度から年収490万円未満まで拡大。「うちは違う」と決めつけず、まず要件チェック
- 申請期限の確認——都道府県ごとに異なる。今すぐ都道府県教育委員会サイトまたは学校事務室に確認を
- 就学支援金との混同に注意——授業料(就学支援金)と授業料以外(奨学給付金)は別制度・別申請
高校の教育費支援は「2本立て」です。就学支援金で授業料が無償になっても、制服・教材・修学旅行・部活動費などの負担は残ります。奨学給付金はその実費部分を補う制度です。対象なら申請しない理由はありません。






