「内申点ってテストの点数で決まるんじゃないの?」──中学生の保護者からこの質問を受けない月はない。文科省の発表を読み解くと、2021年度から全面実施された新学習指導要領により、中学校の通知表は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で評価される仕組みに変わっている。定期テストの点数だけで評定が決まる時代は、すでに終わっている。

本稿では、国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化」参考資料と文科省通知を一次情報として、内申点の構造を解剖し、中1の今から家庭でできる5つの具体的対策を整理する。

内申点とは何か──「調査書」に記載される教科評定の合計

高校入試で使われる「内申点」とは、中学校が高校に提出する「調査書(内申書)」に記載された9教科の評定を、各都道府県が定めた計算式で点数化したものだ。合否判定において、学力検査(入試当日の筆記試験)と並ぶもう一つの柱として機能する。

重要なのは、この「評定」がどのようにつけられているかだ。学習指導要領の本文には、各教科の評定は「観点別学習状況の評価を総括して」決定すると明記されている。つまり、評定5段階の裏側には、3つの観点それぞれのA・B・C評価がある。テストの点数は、この3観点のうち主に「知識・技能」の一部を測定しているに過ぎない。

3観点評価の構造──それぞれ何を見ているのか

観点1:知識・技能

各教科の基礎的な知識の習得と、それを使いこなす技能を評価する。定期テストのうち、一問一答形式や計算問題、用語の正確な記述などがここに当たる。実技教科では実技テストの結果もこの観点に含まれる。

観点2:思考・判断・表現

知識・技能を活用して課題を解決する力を評価する。定期テストでは記述問題や資料読み取り問題がこの観点に該当する。加えて、レポート課題、グループディスカッションでの発言内容、プレゼンテーションの論理構成なども評価材料になる。

観点3:主体的に学習に取り組む態度

ここが最も誤解されやすい観点だ。文科省の通知(2019年1月21日付「児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」)では、挙手の回数やノートの美しさといった形式的な行動で評価してはならないと明確に注意喚起している。

評価すべきは2つの側面だ。第一に「粘り強い取組を行おうとしている」こと。第二に「自らの学習を調整しようとしている」こと。具体的には、間違えた問題を自分で振り返り、次の学習計画に反映しているか──という学びの自己調整力が問われる。

都道府県で異なる計算方法──「中1から対象」は増加傾向

内申点の計算方法は都道府県ごとに異なる。主な例を挙げる。

都道府県対象学年計算方法(概要)満点
東京都中3のみ5教科×5段階+実技4教科×5段階×265点
神奈川県中2・中3中2:9教科×5段階+中3:9教科×5段階×2135点
大阪府中1〜中3中1・2の合計×2+中3の合計×6450点
埼玉県中1〜中3各学年9教科×5段階(学年ごと45点)135点

大学側の意図はこういう構造です──と私が大学入試改革の取材で聞いてきた話と同様に、高校入試でも「中学3年間の学びの積み重ね」を評価する方向に制度が動いている。中1の評定が直接合否に影響する都道府県は年々増加しており、「中3から頑張ればいい」は通用しなくなっている。

中1から家庭でできる5つの対策

対策1:定期テスト=「知識・技能」と「思考・判断・表現」の両方を意識する

テスト勉強を「暗記」だけで終わらせない。記述問題・資料読み取り問題の配点が増えている傾向を踏まえ、「なぜそうなるのか」を説明できる状態を目指す。具体的には、教科書の太字を覚えた後に、その知識を使って一文で説明する練習を加える。

対策2:提出物は「期限」と「振り返りの記述」を最重視する

提出物の期限厳守は前提だが、それだけでは「主体的に学習に取り組む態度」のB評価止まりになりやすい。ワークシートの末尾にある「振り返り欄」に、「今回間違えたのは〇〇の理解が不足していたから。次は△△を確認してから解く」のように、自分の学習を調整する記述を入れることがA評価への分岐点になる。

対策3:実技4教科を「捨て科目」にしない

多くの都道府県で実技4教科(音楽・美術・保健体育・技術家庭)の内申点は1.5〜2倍の傾斜配点になる。実技が苦手でも、筆記テスト対策と授業への積極的参加で評定4は十分に狙える。私が朝6時に起きて各教育委員会のリリースを確認する中でも、実技教科の傾斜配点を見落としている家庭が多いことは繰り返し感じる。

対策4:「授業中の発言」ではなく「学びの記録」を意識させる

前述の通り、挙手回数そのものは評価対象ではない。代わりに評価されるのは、授業内での思考の深まりだ。ノートに「先生の板書を写す」だけでなく、「自分の考え」「友達の意見で気づいたこと」を余白にメモする習慣は、「思考・判断・表現」と「主体的態度」の両方に効く。

対策5:通知表が返ってきたら「観点別評価」を親子で確認する

通知表には評定(5段階)だけでなく、各観点のA・B・C評価が記載されている。評定が同じ「4」でも、「AAB」の4と「ABB」の4では課題が異なる。子どもと一緒に「どの観点がBなのか」を確認し、次の学期で何を意識するかを話し合うだけで、対策の方向性が明確になる。

「主体的態度」を家庭の会話で育てる

5年前、英語民間試験導入の報道が「賛成 vs 反対」の煽り合戦になった際、私は原典を読み込んで論点を多層的に整理する記事を書いた。あのとき痛感したのは、「表面的な情報に飛びつかず、自分で構造を読み解く力」が問われる時代が来ているということだ。

内申点の「主体的に学習に取り組む態度」も、まさにこの力を測ろうとしている。家庭でできることはシンプルだ。食卓で「今日の授業で一番わからなかったことは何?」と聞く。子どもが答えたら「じゃあ次はどうする?」と返す。この2往復の会話が、学びの自己調整力を日常に組み込む最小単位になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. 内申点は中学1年生から高校受験に影響しますか?

都道府県によって異なります。東京都は中3のみ、神奈川県は中2・中3、大阪府や埼玉県は中1から対象です。お住まいの都道府県の教育委員会サイトで最新の入試制度を確認してください。中1が対象外の地域でも、学習習慣の形成という意味で中1からの意識づけは重要です。

Q2. 定期テストで90点を取ったのに評定が4のままです。なぜですか?

評定は3観点の総括で決まります。テスト点数(知識・技能)が高くても、「思考・判断・表現」(レポート・記述問題)や「主体的態度」(振り返りの質・学習調整の姿勢)がB評価であれば、総括して4にとどまることがあります。通知表の観点別欄を確認し、どの観点がB止まりかを特定してください。

Q3. 「主体的に学習に取り組む態度」はどうすれば上がりますか?

文科省の通知が示す評価の2軸は「粘り強い取組」と「自らの学習の調整」です。具体的には、①提出物の振り返り欄に自分の課題と次の行動を書く、②テスト後に間違い分析と改善計画を立てる、③授業内で自分の考えをノートに記述する──この3点を継続的に行うことでA評価に近づきます。

Q4. 実技教科の内申点はなぜ重要なのですか?

多くの都道府県(東京都・愛知県など)で実技4教科に1.5〜2倍の傾斜配点が適用されます。これは「学力検査で測れない教科こそ内申で見る」という制度設計の意図によるものです。実技が苦手でも、筆記テスト対策と授業態度で十分に評定を上げられます。

Q5. 内申点が足りない場合、当日の学力検査で逆転できますか?

可能ですが、都道府県と高校によって内申点と学力検査の比率が異なります(例:東京都は3:7、神奈川県は学校ごとに2:6:2〜4:4:2など)。内申点の比率が低い高校を選べば逆転は可能ですが、選択肢を狭めないためにも日頃から内申点を積み上げることが戦略上有利です。

参考文献

  • 文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(2019年1月21日)https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1415169.htm
  • 国立教育政策研究所 教育課程研究センター「指導と評価の一体化のための学習評価に関する参考資料(中学校)」(2020年3月)https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_mid_sougo.pdf
  • 文部科学省「学習評価に関するQ&A」https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/qa/1299415.htm
  • 奈良県教育委員会「主体的に学習に取り組む態度の評価に関するガイドライン」https://www.pref.nara.jp/secure/293961/shutaitekiguideline.pdf