FP相談でよく聞かれるのが、「夏が終わったら家計も落ち着きますよね?」という質問です。毎年この時期、同じ答えを返しています。「落ち着くのは9月の最初の2週間だけです」と。

お盆が明けると、夏期講習代・帰省費・旅行費・光熱費の4重苦がようやく終わる——と多くの家庭が感じます。ところが、9月から第2ラウンドが始まる。これが「秋の教育費ラッシュ」です。

うちの長女のとき実際に、お盆帰省から戻った翌朝に家計アプリを開いて固まりました。8月の収支がマイナスになっていたのです。旅費・外食・夏期講習が重なって痛かった。「でもこれで終わり」と思ったのが甘かった。翌月の引き落とし一覧を確認すると——塾の後期授業料、秋の模試代、学校の積立金——が連なっていました。その年の反省から「夏の出費が終わったらすぐ秋の試算」を習慣にしています。

結論から言うと家計の見直しが先、ですが、今回はその「秋の見直し」を8月中に先手で動くための具体的な3ステップをお伝えします。

秋の教育費ラッシュの正体——なぜ9〜11月に集中するのか

構造的な原因は3つあります。

① 塾の後期授業料が上がる(特に受験学年)

多くの大手進学塾では、受験学年(小6・中3・高3)の9月以降から「学校別対策講座」「日曜特訓」などの特別授業が加わります。小6の場合、9月からの月謝は前期に比べて月2〜3万円以上アップするケースが一般的で、月8〜9万円台になることも珍しくありません。

さらに、9〜10月に後期分の費用を一括で請求する塾もあります。夏期講習の請求が8月に来たと思ったら、すぐ後期一括払いが来る——このタイミングが読めていない家庭がFP相談で毎年増えます。

② 模試費用が10〜11月に山積みになる

中学受験の世界では、10〜11月は模試の季節です。四谷大塚・日能研・SAPIXなどが主催する公開模試が毎月のように開催され、費用は1回あたり3,000〜6,000円が相場です。日能研の6年生向け全国公開模試は5回パックで4科目30,250円(1回あたり換算で約6,050円)。

高校受験生も同様で、外部模試を複数受けると模試だけで月1〜2万円を超えるケースがあります。「模試代を教育費として計上していなかった」という声は、まさにこの秋に毎年届きます。

③ 学校徴収金が2学期にまとまる

修学旅行(小6・中3が集中)、文化祭・学芸会関係費用、秋の遠足・校外活動代——これらが9〜10月の引き落としに集中します。公立小中学校でも年間数万円の学校徴収金があり、2学期の集金が最も多い学校は少なくありません。

さらに、塾では11月頃から冬期講習の申込が始まります。早期申込割引があるため、11月中に冬期講習の代金が先払いされるケースも起きます。夏の出費が終わったと思ったら、すでに冬の出費が走り出している——これが秋ラッシュの実態です。

学年別「秋の教育費」試算ガイド

FP相談の実績をもとに、9〜11月の3カ月で発生しうる教育費の目安をまとめました。

学年・状況 塾費用(3カ月) 模試・テスト代 学校徴収金等 3カ月合計目安
小4〜小5(受験塾あり) 15〜24万円 1〜3万円 2〜5万円 18〜32万円
小6(中学受験本番年) 25〜35万円 3〜6万円 3〜6万円(修学旅行積立含む) 31〜47万円
中1〜中2(公立・塾あり) 10〜18万円 1〜2万円 3〜8万円(修学旅行等) 14〜28万円
中3(高校受験生) 15〜24万円 2〜4万円 3〜5万円 20〜33万円
塾なし・公立小中 0〜3万円(通信教育等) 0〜1万円 3〜7万円 3〜11万円

受験学年を持つ家庭は、9〜11月の3カ月だけで30〜47万円の教育費が発生しうる。これを8月の段階で知っているかどうかで、10月以降の家計の安定がまったく変わります。

FP流・先読み3ステップ(お盆明け8月中に実行)

Step 1:「秋の教育費カレンダー」を15分で書き出す

お盆明けの週末、15分だけ時間を取って、9〜11月の教育費の予定を書き出してください。スマホのメモでも手帳でも構いません。

  • 塾の後期授業料(月謝・一括払い・特別講座の追加分)
  • 模試の日程と受験料(塾内テスト・外部公開模試)
  • 学校からのお知らせ(修学旅行積立・行事費・教材費)
  • 冬期講習の申込予定と支払い時期
  • 習い事の発表会・コンクール関連費用

書き出したら、月ごとに合計を出します。「9月:◯万円、10月:◯万円、11月:◯万円」と並べるだけで、ピークがどこに来るかが見えます。想定より多かったとしても、今わかったことが重要です。「知らなかった」を「知った上で準備できる」に変えるのが、この15分の価値です。

Step 2:合計額を教育費専用口座に即日振替する

書き出した3カ月の合計が30万円なら、今日のうちに教育費専用口座(なければ教育費用と名付けた口座)に振り替えます。

ポイントは「振替の理由を残すこと」。「9月:塾後期一括15万・修学旅行積立3万、10月:模試2万、計20万振替済み」のようにメモしておくと、引き落としのたびに残高を見て慌てなくなります。

教育費専用口座がない場合は、今がつくるタイミングです。大手ネット銀行の多くは、追加口座や目的別管理機能を無料で使えます。家計口座と混在させると「使える残高」の錯覚が起き、気づいたら教育費の資金に手を付けているという事態が起きやすくなります。

Step 3:10月の随時改定を先読みして積立額を守る

少し先の話ですが、10月は社会保険料の随時改定が反映される月です。夏(4〜6月)の残業が多かった方、7〜8月にシフト変動があったパートの方は、10月の手取りが変わる可能性があります。

教育費の積立金額は手取りを前提に設定しています。10月以降の手取りが変わるなら、今の段階でその変化幅を概算しておく。そして、もし減少が見込まれるなら——積立を「止める」のではなく「下げる」ことを選んでください。

月2万円が月1万円になっても、自動振替が動いている状態を維持することに価値があります。FP相談の実感では、積立を一度止めた家庭の約半数が、6カ月以内に再開できていません。ゼロにした瞬間、再開には能動的な手続きが必要になります。月5,000円でも継続の方が、再開の心理的コストは圧倒的に低いです。

「夏が終わったら見直す」では遅い理由

秋の教育費ラッシュが来てから「足りない、どうしよう」と考えると、一番最初に止まるのが積立です。「今月だけ」と止めた積立が半年以上そのままになる——この構造は、何度もFP相談で見てきました。

だからこそ、ラッシュが来る前の8月中に試算を済ませておくことが、積立を継続させるための最も有効な手段になります。

自分の家庭が今年の秋にいくら教育費がかかるのか——この数字を8月中に持つだけで、9月以降の家計の見え方がまったく変わります。15分の試算が、3カ月の家計の安定を守ります。

よくある質問

Q1. 塾に通っていない家庭は秋の教育費ラッシュは関係ありませんか?

塾なし家庭でも、学校の修学旅行積立・行事費・教材費は2学期に集中します。通信教育・市販問題集・習い事の発表会費用も秋に増える家庭が多いです。「塾なしだから少ない」と過信せず、一度書き出してみることをおすすめします。小学校3〜4年生でも、3カ月合計で5〜8万円の教育関連出費があるケースはよく見ます。

Q2. 専用口座に振り替える余裕がない場合はどうすればいいですか?

生活費口座に余裕がない場合は、一括で移すことにこだわらなくて構いません。「9月分だけ先に振替して、残りは給与日ごとに自動振替」という段階的な設計でも十分です。大切なのは金額より「把握しておくこと」です。引き落とし日に残高が足りなくなるのは、把握していなかったことが原因のほとんどです。

Q3. 模試を何回受けるか迷っています。費用の観点から教えてもらえますか?

費用面だけで言えば、秋の外部模試は月1回程度に絞ることが家計的にはおすすめです。ただし、どの模試が志望校対策として有効かは塾の先生に相談してください。私はお金の話は得意ですが、どの模試が教育的に最適かは教科の専門家に聞く方が正確です。費用と教育効果のバランスを、塾の先生と一緒に考えてみてください。

Q4. 受験学年でない場合、どの程度の金額を見ておけばよいですか?

塾あり・受験学年でなければ3カ月合計で15〜28万円が目安です。塾なし家庭でも学校徴収金・教材費・習い事の秋イベントで5〜10万円は見ておく家庭が多いです。9月のお便りが来たタイミングで確認すると、実数で把握できます。

Q5. 10月に手取りが減った場合、教育費の積立はどこを削ればよいですか?

積立を削る前に、固定費の見直しを1カ所だけ試してください(通信費・保険料・サブスクの中から1つ)。1回の見直しで月3,000〜10,000円が浮くケースは珍しくなく、これで積立の穴を埋められることがあります。それでも足りない場合は、積立を止めずに最低額(月5,000円程度)まで下げることを選んでください。ゼロより、続くことの方が長期の教育資金に与える影響は大きいです。

まとめ

  • 秋(9〜11月)は塾後期授業料・模試代・学校徴収金・冬期講習申込が重なる「第2の教育費ラッシュ」
  • 受験学年を持つ家庭は3カ月で30〜47万円の教育費が発生しうる
  • お盆明けの今週末15分で「秋の教育費カレンダー」を月別に書き出す
  • 合計額を教育費専用口座に即日振替し、引き落としに備える
  • 10月の随時改定を先読みし、積立は「止めず・下げる」で乗り越える

教育費は「知った瞬間から準備できる」費用です。「いつか見直そう」より「今日書き出す」の一歩が、秋以降の家計を守ります。

参考文献・データ出典

  1. 日能研「全国公開模試 実施要項 2026年度」(6年生5回パック・4科目30,250円)https://www.nichinoken.co.jp/moshi/apply/accept06.html
  2. 塾シル「【2026】中学受験大手4塾の年間費用比較」https://jukushiru.com/article/post-32396/
  3. 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(各学年の学校外活動費データ)