「こどもNISAが始まってから動こうと思って……」

FP相談でよく聞かれるのが、まさにこの言葉です。2026年8月現在、2027年1月1日からの開始が法律で確定したこどもNISA(年間60万円・上限600万円・18歳で成人NISAへ自動移行)を前に、教育資金の積立を「待機中」にしている家庭が急増しています。

気持ちは痛いほどわかります。うちの長男のとき実際に、「どの器にするか決まるまで動けない」と3カ月以上悩んで、結局慌てて学資保険を1本契約しました。その後で「新NISAに乗り換えるべきか」と5パターンものシミュレーションを作る羽目になったのは、いまでも苦い記憶として残っています。

でも、待機には見えないコストがあります。今回は2026年後半の3つの選択肢──学資保険(返戻率127〜129%台)・親の新NISA・2027年こどもNISA──を月2万円で比較し、「今すぐ動くか・待つか」の判断材料を整理します。

「待ち」の5カ月で失うものを数字にする

2027年1月まで残り約5カ月。月2万円を積み立てられる家庭が待機した場合、積み立てを逃す金額は合計10万円です。

これを親の新NISA(つみたて投資枠)で年率5%で運用した場合、18年後には約12.8万円になっていた計算です(複利効果を含む概算)。一方で学資保険は0歳加入が返戻率の最高水準であり、5カ月遅れると保険料が高くなるか返戻率が下がる可能性があります。多くの学資保険では加入年齢が上がるごとに条件が悪化します。

「5カ月くらい大丈夫」は、長期では万円単位の差を生む判断ミスです。

2026年後半の教育資金設計──3つのパターン

結論から言うと家計の見直しが先、というのが私の原則ですが、月2万円の積立原資が確保できたとして、次の3パターンから選ぶことができます。

パターンA:学資保険を今すぐ新規加入(確実性重視)

2026年現在、明治安田生命「つみたて学資」で最高129.2%、ソニー生命学資保険Ⅲ型で127.4%(いずれも0歳・特定条件での試算値)と、学資保険の返戻率は2010年代前半の103〜108%台から大きく回復しています。年利換算すると約1.3〜1.4%の確定利回りに相当します。

学資保険が親の新NISAと根本的に違う点が2つあります。

  • 払込免除特約:契約者(親)が亡くなっても、その後の保険料が免除され、満期金は受け取れます。子どもの教育資金を「万が一」から守る仕組みは、NISAにはありません。
  • 元本割れリスクがない:満期まで続ければ必ず払込総額を上回る金額が受け取れます。

パターンAが向いている家庭:

  • 片働きで収入保障が手薄な家庭
  • 投資の値動きに精神的な負担を感じる家庭
  • 子が0〜2歳で今が返戻率の高い加入適齢期の家庭

注意点として、こどもNISAが始まっても学資保険を「解約する必要はない」です。早期解約は元本割れになるため、学資保険は続けながらこどもNISAを上乗せする設計が現実的です。

パターンB:親の新NISAで今すぐ積立開始(こどもNISA後に移行)

親の新NISA(つみたて投資枠)にはいつでも解約・引き出しができるという大きな特徴があります。こどもNISAが始まったあとに積立の配分先を変更するのも自由です。

月2万円を年率5%で18年積み立てた場合の試算:

積立手段 払込総額 18年後の金額(目安) 増加分
親の新NISA(年率5%想定) 432万円 約691万円 +259万円(非課税)
学資保険(返戻率127.4%) 432万円 約550万円 +118万円(確定)
普通預金(金利0.3%) 432万円 約448万円 +16万円

ただし年率5%は「達成できた場合」の試算であり、リスク商品である点は忘れないでください。大学入学まで10年以上ある子どもの教育資金なら、時間の余裕がリスクを平準化してくれますが、3〜5年後に使う塾代や入学準備費には向きません。

パターンBが向いている家庭:

  • 夫婦ともに就労中で収入保障(団信・収入保障保険)が別途確保できている
  • 子が0〜5歳で10年以上の運用期間がある
  • 2027年のこどもNISA開始に合わせて設計を切り替えたい

パターンC:学資保険+親NISAのハイブリッド(笠原の実践)

うちの長男のとき実際に採用したのが、このハイブリッド型です。月2万円の内訳を「学資保険:月1.2万円(確実な土台)+親の新NISA:月0.8万円(2027年からこどもNISAへ移行)」とする設計です。

なぜこの比率か。学資保険は「死亡保障+元本保証」の安心感を担い、NISAは「成長の上乗せ」を担う。一方だけでは得られない二重の機能を月2万円で実現できるのが、ハイブリッドの強みです。FP相談1,500件の経験では、3年以上積立を継続できている家庭の多くが、この「土台+上乗せ」構造を持っています。

月2万円のハイブリッド設計例:

時期 学資保険 NISA枠
2026年8月〜2026年12月 月1.2万円(新規加入) 月0.8万円(親の新NISA)
2027年1月〜 月1.2万円(継続) 月0.8万円(こどもNISAへ移行)

2027年1月こどもNISA開始後の設計変更ポイント

こどもNISAが始まったら押さえたい変更点が3つあります。

①中学入学年より前は原則払い出し不可:こどもNISAは子が中学校に入学する年より前は原則として非課税での払い出しができません(災害時等を除く)。中学受験の塾代(小4〜小6)と時期が重なるため、塾代は親の新NISAか預貯金で別口座管理することが必須です。こどもNISAに全額入れると中受費用に困るという構造は変わりません。

②中学入学年以降は子の教育費に使える:中学入学後は子本人の教育費・生活費として払い出しが認められます。高校・大学の費用に柔軟に使えるのは、学資保険の満期設計より自由度が高い点です。

③18歳で成人NISAの1,800万円枠に移行:子が18歳になると、こどもNISAは自動的に成人のNISAに引き継がれます。600万円分の非課税運用が成人後も継続できるのは、旧ジュニアNISAにはなかった大きなメリットです。

今すぐ確認すべき「積立原資」の捻出先

どのパターンを選ぶにしても、月2万円の積立原資が確保できているかが先決です。FP相談で固定費を一緒に見直すと、通信費(スマホ2台を格安SIMへ:月5,000〜15,000円削減)と保険の重複整理(月3,000〜8,000円削減)だけで月1〜2万円が浮くケースが大半です。

「こどもNISAが始まったら考える」ではなく、「今月の固定費を1件見直して積立原資を作る」が先です。積立原資が生まれれば、パターンA〜Cのどれでも動けます。

よくある質問

Q1. こどもNISAが始まってから学資保険を解約してNISAに移した方がいいですか?

基本的には不要です。学資保険の早期解約は元本割れになるケースが大半のため、解約より「継続しながらこどもNISAを上乗せ」が有利です。どうしても解約を検討する場合は、解約返戻金・残り年数・代替の死亡保障の3点を必ず数字で確認してください。

Q2. 月2万円の積立が厳しい家庭は月1万円から始めても意味がありますか?

あります。月5,000円でもゼロより格段に有利です。自動振替を設定してしまえば「増額は後でいつでもできる」が真実になります。まずは金額より「仕組みを作ること」が優先です。

Q3. こどもNISAは子ども1人につき1口座ですか?金融機関はどこでもいいですか?

はい、子ども1人につき1口座・1金融機関のみです。親権者が口座開設の手続きをします。金融機関は2027年1月の制度開始後に各社が受け付けを開始する予定ですので、2026年内に手続きすることはできません。

Q4. 学資保険の「一括払い」は返戻率が上がると聞きましたが、やった方がいいですか?

払込期間を短縮するほど返戻率は上がります。ただし一括払いは家計の流動性を大きく下げます。「教育資金に使う予定の預貯金がすでにある場合」に限り検討し、生活防衛資金(最低3〜6カ月分)が別に確保できていることが前提です。

Q5. 学資保険の生命保険料控除と新NISAの節税効果はどちらが大きいですか?

長期的には新NISAの節税効果が圧倒的に大きいです。学資保険の生命保険料控除は年最大4万円の所得控除(年収500万円の家庭で年間節税効果約8,000円・18年で14万円程度)。一方で新NISAは運用益全額が非課税であり、年率5%・18年運用で259万円の利益に対する税金約53万円がゼロになります。ただし学資保険の節税は「確定」、NISAの節税は「運用次第」という違いは忘れないでください。

参考文献

  • 金融庁「令和6年度税制改正大綱」(2025年12月)こどもNISA(こども支援NISA)の制度骨子
  • 大和総研 平石隆太「2027年1月開始『こどもNISA』の概要」(2026年5月26日)
  • ソニー生命「学資保険(無配当)Ⅲ型 返戻率・保険料一覧」(2026年4月2日時点)
  • 明治安田生命「つみたて学資 商品概要説明書」(2026年版)
  • 生命保険文化センター「2024年度 生命保険に関する全国実態調査」