FP相談で意外に多いのが「離婚が成立するまで児童扶養手当はもらえないんですよね?」という思い込みだ。筆者自身、横浜市の窓口で別居相談を受けている知人FPから「申請できるのに知らずに損をしている人が本当に多い」と聞いて驚いた経験がある。

結論から言うと、児童扶養手当は「離婚届」が受理されていなくても受給できるケースが複数ある。2026年5月現在、全部支給なら月額48,050円(子ども1人)。年間で約57万円になる。別居やDVで家計が苦しいのに「まだ離婚していないから」と申請を後回しにしている人は、制度の対象者かどうかだけでも確認する価値がある。

そもそも児童扶養手当とは──児童手当との違いを30秒で整理

児童扶養手当は、ひとり親家庭等の生活安定と子どもの福祉向上を目的とした国の制度だ。よく混同される「児童手当」とは別物で、こちらはすべての子育て世帯が対象ではなく、ひとり親や事実上のひとり親状態の家庭に限定される。

支給対象は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子ども(障害がある場合は20歳未満)を養育する父または母、もしくは養育者。根拠法は児童扶養手当法で、窓口は各市区町村の児童福祉課になる。

離婚届なしでも受給できる5つのケース【2026年5月時点】

こども家庭庁が定める児童扶養手当の支給要件には、離婚以外にも複数の事由が含まれている。FP相談の現場で「知らなかった」と言われることが多い5つのケースを整理する。

ケース1:DV防止法に基づく保護命令が出ている場合

配偶者からの暴力(DV)を理由に裁判所の保護命令が発令されている場合、離婚が成立していなくても児童扶養手当の受給対象になる。2012年8月の法改正で追加された要件だ。保護命令の写しを窓口に提出すれば申請できる。

ケース2:事実上の別居で生計が別になっている場合

離婚協議中や調停中で別居しており、かつ配偶者と生計を同一にしていない場合も対象となる可能性がある。ただし「住民票を異動しているか」「社会保険上で配偶者の扶養から外れているか」など、自治体によって確認書類が異なるため、まず住所地の窓口に相談するのが確実だ。

ケース3:未婚のひとり親である場合

婚姻歴がなく、子どもの父または母と事実上婚姻関係にない場合は、最初から受給要件を満たす。「未婚の母」に限らず未婚の父も同様だ。認知の有無に関わらず申請できるが、認知した父から養育費を受け取っている場合はその8割が所得に加算される点は注意が必要。

ケース4:配偶者が1年以上遺棄している場合

配偶者が正当な理由なく1年以上家を出て連絡が取れない、あるいは生活費を渡さず養育義務を放棄している場合も「遺棄」として受給要件に該当する。民生委員の証明書等が求められるのが一般的だ。

ケース5:配偶者が1年以上拘禁されている場合

配偶者が刑事施設に1年以上収容されている場合も支給対象になる。こちらは在監証明書の提出で確認される。

いずれのケースでも、事実婚状態(同居のパートナーがいる場合)では支給が停止される。ここは見落としやすいので、同居人がいる場合は窓口で正直に相談しておきたい。

支給額はいくら?──全部支給・一部支給の計算方法【令和7年4月改定】

2025年4月(令和7年4月)改定後の支給額を整理する。

子ども1人の場合

全部支給:月額48,050円(年額576,600円)。一部支給は所得に応じて月額48,040円~11,340円の範囲で10円刻みに減額される。

子ども2人目以降の加算

全部支給:1人あたり月額11,350円加算。一部支給は11,340円~5,680円。つまり子ども2人なら全部支給で月額59,400円、3人なら70,750円になる。

所得制限限度額(令和7年10月~令和8年9月適用分)

受給者本人の前年所得で判定される。扶養親族の人数ごとの限度額は以下の通り。

扶養親族0人の場合、全部支給は所得69万円未満、一部支給は所得208万円未満。扶養親族1人なら全部支給107万円未満、一部支給246万円未満。以降1人増えるごとに38万円ずつ加算される。

注意すべきは、養育費の8割相当額が所得に加算される点。たとえば月額5万円の養育費を受け取っている場合、年間48万円(5万×12か月×0.8)が所得に上乗せされる計算になる。これを知らずに「所得制限を超えた」と思い込んでいる人もいるが、逆に養育費ゼロの人は限度額に余裕が出る。

申請の流れと窓口で「事前に準備すると話が早い」書類リスト

児童扶養手当は申請主義。役所が勝手に支給してくれることはない。FP相談で「離婚して1年経ってから知った」という方が毎月のようにいる。さかのぼり支給は原則できないため、対象になりそうだと思ったらすぐ動くのが鉄則だ。

申請先

住所地の市区町村役場の児童福祉課(名称は自治体により異なる)。郵送不可の自治体が多く、基本は窓口申請になる。

事前に準備しておくとスムーズな書類

戸籍謄本(申請者と子ども)、住民票(世帯全員分)、所得証明書(1月2日以降に転入した場合)、年金手帳の写し、振込先の通帳の写し。DV別居の場合は保護命令の写しまたはDV被害の証明書類。未婚の場合は子どもの戸籍で父または母の記載を確認する。

筆者の知人FPは「窓口に行く前に電話で自分のケースだと何が必要かを確認するのが一番早い」と口をそろえる。自治体独自の追加書類が求められることもあるからだ。

支給開始と振込スケジュール

認定されると、申請月の翌月分から支給対象になる。振込は年6回、奇数月(1月・3月・5月・7月・9月・11月)にそれぞれ前2か月分がまとめて振り込まれる。

「児童手当」「児童扶養手当」「特別児童扶養手当」──名前が似ていて混乱する3つの手当の違い

FP相談の現場では「児童手当と児童扶養手当は同じものだと思っていた」という声が絶えない。実際、名前が紛らわしい。3つの違いを表形式で整理しておく。

児童手当は原則すべての子育て世帯が対象で、所得制限は2024年10月に撤廃された。児童扶養手当はひとり親等の家庭が対象で、所得制限あり。特別児童扶養手当は障害のある子どもを養育する家庭が対象で、こちらも所得制限がある。

ポイントは、これらは併給できるということ。児童手当を受け取りながら、児童扶養手当も同時にもらえる。「片方をもらっているからもう片方は申請できない」は誤解だ。

現況届の提出忘れで支給停止──毎年8月の手続きを忘れない仕組みづくり

児童扶養手当は毎年8月に「現況届」を提出する必要がある。これを提出しないと11月分以降の支給が止まる。

わが家の長女が通っていた保育園のママ友にも「8月バタバタしてて出し忘れた」という人がいた。横浜市の場合、8月中に届出用紙が届くが、届かないこともある。自治体のホームページで7月末ごろに案内が出るので、スマホのリマインダーに「8月1日 現況届」と入れておくのが手っ取り早い。

また、受給開始から5年(または支給要件を満たしてから7年)を経過すると、一部支給停止の対象になる場合がある。就業している、または求職活動中であることを届け出れば停止は回避できるが、この手続きも忘れがちだ。

FAQ

児童扶養手当の申請は離婚調停中でもできますか?

配偶者と別居して生計が別になっていることが確認できれば、離婚調停中でも申請可能な自治体が多いです。住民票の異動や健康保険の扶養離脱など、生計分離の証拠書類を窓口で確認してもらいましょう。

養育費をもらっていると児童扶養手当は減りますか?

養育費の8割が所得として加算されるため、所得制限の判定に影響します。ただし全額カットではなく、8割加算後の所得が限度額以内なら受給できます。養育費ゼロの場合は加算なしで計算されます。

実家に戻って親と同居すると児童扶養手当はもらえない?

親が「扶養義務者」となるため、親の所得が扶養義務者の所得制限(扶養親族0人で236万円未満)を超えていると支給停止になる可能性があります。ただし、世帯分離している場合や親の所得が基準内であれば受給できるケースもあるため、窓口で相談してください。

児童扶養手当と生活保護は同時に受けられますか?

受給自体は可能ですが、児童扶養手当の額が生活保護費から差し引かれるため、実質的な「上乗せ」にはなりません。生活保護を受給中の方は担当ケースワーカーに確認してください。

参考文献