FP相談でよく聞かれるのが、「うちの子は発達障害の診断を受けたんですけど、特別児童扶養手当ってもらえるんですか?」という質問です。

結論から言うと、発達障害(ADHD・ASD・学習障害など)も特別児童扶養手当の対象です。ただし「診断名がある=自動的にもらえる」わけではなく、日常生活でどのくらい援助が必要かという「障害の程度」で認定されます。ここが見落としやすいポイントです。

SNSでも先日、「特別児童扶養手当と障害年金のおかげで生活が楽になった」という投稿を見かけました。制度を知っているかどうかで、家計への影響は月3〜6万円。年間にすると40〜70万円の差になります。

特別児童扶養手当とは──制度の基本を30秒で

特別児童扶養手当は、20歳未満の障害のある子どもを育てる父母(または養育者)に支給される国の手当です。身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)が対象で、障害の程度に応じて1級と2級に区分されます。

「児童手当」や「児童扶養手当(ひとり親向け)」とは別の制度です。名前が似ているので混同しやすいですが、まったく異なる手当で、併給も可能です。

2026年度の支給額と支給スケジュール

等級月額年額(12カ月)
1級(重度)58,450円701,400円
2級(中度)38,930円467,160円

支給は年3回(4月・8月・11月)で、各月の前月分までがまとめて振り込まれます。申請した月の翌月分から受給が始まるため、1カ月遅れると1カ月分を丸ごと損する仕組みです。「様子を見てから」と先延ばしにしないことが大切です。

発達障害の認定基準──IQではなく「日常生活の困難さ」で判断

ここが最も誤解されやすいポイントです。発達障害の場合、知能指数(IQ)が高くても認定される可能性があります。厚生労働省の認定基準では、以下のように定められています。

1級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの。

2級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、不適応な行動が見られるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの。

つまり、「対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない」ことによる日常生活の制限に着目して認定されます。IQが平均以上でも、学校や家庭で著しい困難がある場合は対象になり得ます。

所得制限──共働き家庭でも受給できるケース

特別児童扶養手当には所得制限がありますが、児童手当と比べるとかなり緩やかです。

扶養親族の数受給者本人の所得限度額配偶者・扶養義務者の所得限度額
0人459.6万円628.7万円
1人497.6万円653.6万円
2人535.6万円674.9万円

※扶養親族が3人以上の場合は、1人につき本人は38万円、配偶者等は21.3万円が加算されます。

注意すべきは、所得制限は「世帯合算」ではなく「受給者本人」と「配偶者・扶養義務者」を別々に判定する点です。共働きで世帯年収が高くても、受給者本人の所得が限度額以内なら受給できます。うちの長女のとき実際に計算してみたことがありますが、所得からは医療費控除や障害者控除が差し引けるので、見た目の年収より限度額をクリアしやすいケースが多いです。

申請で見落としがちな3つのポイント

ポイント1:療育手帳がなくても申請できる

「手帳を取ってからでないと申請できない」と思い込んでいる方が多いのですが、医師の診断書があれば療育手帳なしでも申請可能です。発達障害の場合、手帳の取得に時間がかかることも多いので、診断がついた時点で申請を検討すべきです。

ポイント2:診断書は「日常生活の困難さ」を具体的に書いてもらう

認定審査で最も重視されるのは、医師の診断書の記載内容です。診断名だけでなく、「一人で着替えができない」「友人関係でトラブルが頻発する」「パニックを起こして授業が受けられない」など、日常生活でどのような場面で困難が生じているかを具体的に書いてもらうことが重要です。

主治医に家庭や学校での具体的な困りごとを事前にメモにまとめて渡すと、診断書の記載が充実しやすくなります。

ポイント3:毎年8月の「所得状況届」を忘れない

特別児童扶養手当は、認定を受けた後も毎年8月11日〜9月10日に「所得状況届」を提出する必要があります。これを出さないと手当が差し止められます。また、2年間届出をしないと受給資格を失います。

さらに、おおむね2年に1度は「再認定」のための診断書提出が求められます。認定の有期期限は個別に設定されるので、届いた通知は必ず確認しましょう。

申請の流れ──必要書類と窓口

申請先はお住まいの市区町村の障害福祉課(または子育て支援課)です。必要書類は以下のとおりです。

  • 認定請求書(窓口で入手)
  • 請求者と対象児童の戸籍謄本または抄本
  • 医師の認定診断書(所定様式、作成日から2カ月以内)
  • 請求者名義の口座情報
  • マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類

身体障害者手帳1〜3級、療育手帳A・B判定をお持ちの場合は、手帳の写しで診断書を省略できる場合があります。事前に窓口に電話で確認するのがおすすめです。

他の制度との併用──知らないと損する組み合わせ

特別児童扶養手当は以下の制度と併給が可能です。

  • 児童手当:全額併給可(所得制限撤廃済み)
  • 障害児福祉手当:重度障害の場合に月15,690円が加算(別途申請)
  • 自治体独自の手当:東京都の「児童育成手当(障害手当)」など、自治体ごとに上乗せ制度あり

また、特別児童扶養手当の受給者は、障害者控除(所得税27万円・住民税26万円)の対象になることも見落とされがちです。年末調整や確定申告で適用すれば、さらに税負担が軽くなります。

よくある質問(FAQ)

Q1. 発達障害のグレーゾーンでも申請できますか?

医師の診断書が出せる程度の障害であれば申請は可能です。ただし認定されるかは「日常生活の困難の程度」次第です。グレーゾーンの場合は不認定となることもありますが、申請にデメリットはないので、主治医に相談して診断書を書いてもらえるか確認しましょう。

Q2. 不認定になったら再申請できますか?

はい、再申請は可能です。前回の不認定から障害の状態が変わった場合や、診断書の内容を充実させた場合は改めて申請できます。不認定通知から60日以内であれば「審査請求」(不服申立て)も選択肢です。

Q3. 特別児童扶養手当をもらっていると保育園入園に影響しますか?

影響しません。特別児童扶養手当の受給と保育園の入園審査は別の仕組みです。むしろ障害のある子どもの加配保育士が配置されるなど、プラスに働く面もあります。

Q4. 所得制限を超えた年は返金が必要ですか?

過年度の所得に基づいて翌年度の支給が停止される仕組みのため、すでに受け取った手当の返金は原則不要です。ただし、所得が下がれば翌年度から支給が再開されます。

Q5. 他の都道府県に引っ越したら再申請が必要ですか?

はい。転出届を出した翌日から15日以内に、転入先の市区町村で改めて認定請求を行う必要があります。手続きが遅れると空白期間が生じるので注意してください。

参考文献

  • 厚生労働省「特別児童扶養手当について」
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jidou/huyou.html
  • 厚生労働省「特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令別表第3における障害の認定について」(昭和50年児発第576号)
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta9427&dataType=1&pageNo=2
  • 東京都心身障害者福祉センター「特別児童扶養手当(国制度)」
    https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/shinsho/teate/toku_ji
  • LITALICO発達ナビ「【令和7年度最新】特別児童扶養手当にデメリットはある?発達障害の認定基準や所得制限・金額」
    https://h-navi.jp/column/article/35025553