FP相談でよく聞かれるのが「5月の給与明細、なんか手取りが減ってるんですけど……」という声です。2026年4月分の健康保険料から「子ども・子育て支援金」の天引きが始まりました。翌月徴収の会社では5月支給の給与から、当月徴収なら4月支給の給与から引かれています。

金額は年収600万円の会社員で月575円。「たかが数百円」と思うかもしれませんが、これは2028年度まで段階的に引き上げられる予定で、夫婦共働きなら世帯合計の負担は無視できません。しかも、この支援金は子どもがいない世帯からも徴収されます。

結論から言うと家計の見直しが先──新たな天引きに気づいたこのタイミングこそ、固定費を棚卸しして「取られた分を取り返す」家計調整の好機です。

子ども・子育て支援金とは? 仕組みを30秒で理解する

子ども・子育て支援金は、2024年に成立した「子ども・子育て支援法等改正法」に基づき、2026年4月から徴収が始まった新しい制度です。健康保険料に上乗せされる形で、医療保険の加入者全員(子どもの有無を問わず)から徴収されます。

ポイントは3つです。

  • 労使折半:支援金率0.23%のうち、本人負担は半分の約0.115%
  • 賞与からも徴収:月々の給与だけでなく、ボーナスからも天引きされる
  • 段階的引き上げ:2026年度→2027年度→2028年度で3段階に増額される

集められた支援金は、児童手当の拡充やこども誰でも通園制度、出生後休業支援給付金などの財源に充てられます。子育て世帯にとっては「負担して、恩恵も受ける」構造ですが、恩恵を受け取るには申請が必要な制度が多い点に注意が必要です。

年収別の負担額早見表──夫婦合計でいくら?

こども家庭庁の試算をもとに、会社員(協会けんぽ)の本人負担額を年収別にまとめました。

年収2026年度(月額)2027年度(月額見込み)2028年度(月額見込み)
200万円約192円約275円約350円
400万円約384円約550円約700円
600万円約575円約825円約1,000円
800万円約767円約1,100円約1,350円
1,000万円約959円約1,375円約1,650円

※ 健康保険組合によって料率が異なる場合があります。2027年度・2028年度は支援納付金総額(8,000億円・1兆円)からの概算です。

たとえば夫・年収600万円+妻・年収200万円の共働き世帯なら、2026年度で月767円、年間約9,200円。2028年度には月1,350円・年間約16,200円に増える見込みです。ボーナスからも天引きされるため、実際の年間負担はさらに大きくなります。

うちの場合、夫が時短勤務から通常勤務に切り替えた年に4〜6月の残業が集中して標準報酬月額が1等級上がり、年間約3.6万円の手取り減を経験しました。子ども・子育て支援金の上乗せは、この「見えない手取り減」と同じ構造です。金額が小さいからこそ気づかずに放置しがちですが、3年間で負担は約1.7倍になります。

「取られた分を取り返す」家計調整3ステップ

ステップ1:給与明細の「健康保険料」欄で実際の増額を確認する

まず2026年3月以前の給与明細と4月以降(翌月徴収なら5月以降)の給与明細を並べて、健康保険料の差額を確認しましょう。2026年度は協会けんぽの医療分保険料率が0.10ポイント引き下げられた(10.00%→9.90%)ため、支援金0.23%と相殺されて実質の増額は0.13%分です。

つまり標準報酬月額30万円の方なら、実質の手取り減は月195円程度。「思ったより少ない」と安心するのではなく、2027年度以降は医療分の引き下げがなくても支援金率だけが上がるため、今のうちに備えておくことが重要です。

ステップ2:固定費の「年間棚卸し」で支援金増額分を先回りで確保する

FP相談1,500件の実績から言えるのは、固定費の見直しで月1,000〜2,000円を浮かせるのは、食費を削るより圧倒的に簡単ということです。

うちの長女のとき実際にやったのは、夫婦で大手キャリアから格安SIMに乗り換えたこと。データ使用量を確認したら月3GB以下しか使っていないのに20GBプランを契約していて、切り替えだけで月約1.2万円・年間14万円以上の削減になりました。

見直しの優先順位は以下の3つです。

  1. 通信費:格安SIMへの乗り換えで夫婦2人なら月3,000〜8,000円の削減が見込める。自宅Wi-Fiがあれば3GBプランで十分なケースが多い
  2. 保険料:独身時代の保険を放置していないか。公的保障(遺族年金・高額療養費・団信)を差し引くと、民間保険の必要額は想像より小さい。我が家は見直しで月約1万円浮いた
  3. サブスク:動画配信・音楽・クラウドストレージなど、1件500〜1,500円のサービスが5つ重なると月5,000円超。「先月使ったか?」を基準に棚卸しする

この3項目だけで月2,000〜15,000円の削減は十分に射程圏内です。支援金の2028年度増額分(世帯で月1,000〜1,500円程度)は、通信費の見直しだけでカバーできる計算になります。

ステップ3:浮いた分を「自動振替」で教育資金口座に流す

固定費見直しで浮いたお金を、そのまま生活費口座に置いておくと生活費に溶けます。これはFP相談でも繰り返し見てきたパターンです。

やるべきことはシンプルで、浮いた金額と同額の自動振替を、給与日翌日に設定するだけ。振替先は教育資金専用口座か、生活防衛資金口座にします。

仮に月3,000円を18年間積み立てると、元本だけで約65万円。新NISAで年利3%運用できれば約86万円になります。子ども・子育て支援金の「負担増」がきっかけで始めた積立が、子どもの大学入学金に届く可能性があるのです。

支援金を払っているのに恩恵を受け取れていない? 申請漏れチェック

子ども・子育て支援金の財源で拡充された制度のうち、申請しなければ受け取れないものが複数あります。「払うだけ払って受け取っていない」状態は最も避けたいところです。

  • 児童手当の確認書:18歳超の子を多子カウントに含めるには「確認書」の提出が必要。提出忘れで月3万円の差が出るケースも
  • 出生後休業支援給付金:夫婦ともに14日以上の育休取得が条件。パパ5日だけでは要件を満たせない
  • 育児時短就業給付金:時短にすれば自動でもらえるわけではなく、事業主経由で4カ月以内にハローワークへ申請が必要

支援金を負担している以上、使える制度は全部使い切るのが合理的です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中も子ども・子育て支援金は徴収されますか?

育休中は社会保険料が免除されるため、支援金も免除されます。ただし育休を取得せずに時短勤務をしている場合は、標準報酬月額に応じた支援金が徴収されます。

Q2. 自営業(国民健康保険)の場合の負担額はいくらですか?

国民健康保険加入者の場合、2026年度の1人あたり平均負担は月約350円と試算されています。ただし自治体ごとの保険料率に依存するため、お住まいの市区町村に確認してください。

Q3. 子どもがいない世帯も支援金を払うのですか?

はい、医療保険の加入者全員が対象です。子どもの有無や年齢は関係ありません。これは「社会全体で子育てを支える」という制度設計によるものです。

Q4. 支援金が引き上げられる2027年度・2028年度のスケジュールは確定していますか?

支援納付金の総額(2027年度:約8,000億円、2028年度:約1兆円)は法律で定められていますが、具体的な料率は各年度の予算編成で確定します。2026年度の0.23%から約1.7倍程度まで引き上げられる見込みです。

参考文献