育休3ヶ月目の深夜、寝かしつけを終えてスマホを見たら、同期の昇格報告がタイムラインに流れていた。「おめでとう」と思いながら、正直かなりしんどかった。「自分はこのまま取り残されるんじゃないか」という感覚と一緒に、「今の会社じゃなくて、別の場所でキャリアを作り直すべきなんじゃないか」という考えも頭をよぎった。

実際に育休取った身として言うと、この感覚は珍しくないと思います。でも、育休中・時短復職中の転職は「やり方を間違えると、思いがけない落とし穴を踏む」という独特の複雑さがある。保育園の退園リスク、育休給付金の条件リセット、時短勤務の法的保護の問題──これらは転職エージェントのサイトにはなかなか書いてない。

今回は、育休6ヶ月・時短復職を経験したパパとして、「子育て中の転職をいつ・どう動くか」を整理してみます。

「子育て中の転職」が複雑な3つの理由

子育て中の転職が難しいのは、単純に「忙しいから」だけではない。構造的な問題が3つある。

① 保育園が退園になるリスク

多くの自治体では、保育園の利用条件として「保護者が就労中であること」が求められる。転職の間に一度でも「無職期間」が生じると、退園を求められるケースがある。東京23区でも自治体によって対応がバラバラで、「求職活動中でも90日は猶予を持つ」自治体もあれば、「退職と同時に退園手続きを求める」自治体もある。

「内定が出てから退職する」が鉄則。転職活動中は絶対に先に退職しない。また、転職後は速やかに新しい勤務先の就労証明書を自治体に提出する必要があり、手続きを怠ると在園継続が取り消されるリスクもある。

② 育休給付金・育休取得の条件がリセットされる

転職先で2人目の育休を考えているなら、慎重に動く必要がある。育児休業給付金の原則的な要件は「育休開始前2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上」であること。転職した場合、前職の加入期間を通算できる場合もあるが、条件が「前職を退職してから1年以内」かつ「失業手当を受給していないこと」に限られる。

また、転職先に入社してすぐ育休を申請すること自体は法律上可能になったが(2023年以降、新規の「入社1年未満は育休不可」とする労使協定は原則廃止)、会社の就業規則に古い規定が残っているケースもある。内定後に就業規則の確認が必要だ。

③ 時短勤務・残業免除の法的保護は「在職中の会社」だけ

時短復職のリアルは、制度の保護が転職先ではゼロから積み上げになるということ。現職では「小学校就学前まで残業免除」や「時短勤務」が認められていても、転職先でその保護がそのまま引き継がれるとは限らない。入社直後は制度の利用実績もなく、上司との関係も浅い。子どもの体調不良に合わせた柔軟な働き方を認めてもらうには時間がかかる。

現職では既に使える状態にある制度を、転職先でゼロから積み上げ直す──そのコストを転職のメリットと比較して判断する必要がある。

子どもの年齢別タイミングガイド

子どもの年齢によって転職のリスクと選択肢は大きく変わる。以下はパパ目線での目安だ。

0〜1歳(育休中・育休明け直後)── リスクが最も重なる時期

育休中に転職活動をするのは法律上問題ないが、育休給付金への影響・保育園内定への影響・面接日程の調整難易度など、複数のリスクが重なる。育休明け直後は保育園に入ったばかりで慣らし保育期間と重なり、転職先の面接を組む余力もない。

この時期は「どうしても今しかない切実な理由」がある場合を除き、慌てて動く必要はない。

1〜3歳(法定時短勤務期間中)── 現職の保護が最も厚い時期

子どもが1〜3歳の間は、法律上の時短勤務義務期間(3歳未満)の中にいる。現職で時短勤務・残業免除という法的保護が使える状態だ。転職するとその保護がゼロからのスタートになる。

「現職のハラスメントや健康被害がある」「収入が家計的に本当に維持できない」という状況なら転職は選択肢になる。そうでなければ、現職で制度を使い切ってから判断するのが合理的だ。

3〜6歳(保育園の安定期)── 子育て中の転職では最も動きやすい時期

子どもが3歳を超えると保育環境が安定してくる。体調不良の頻度も1〜2歳に比べて下がり、朝のルーティンも安定してくる。法定の時短勤務義務(3歳未満)は終わるが、2025年10月施行の改正育児介護休業法でフレックス・テレワーク等の柔軟措置の選択肢が広がり、転職先でも交渉しやすくなった。

転職後の職場慣れと子どもの生活リズムの安定が重なるこの時期は、子育て中の転職として現実的なウィンドウだ。

小学校入学前後(5〜7歳)── 移行期は重ならないように注意

小学校入学は子どもにとって大きな環境変化だ。この時期に親の職場も変わると、家族全体が同時に新しい環境に適応することになる。「小1の壁」(学童・登下校・PTAなど)の課題が転職の慣れと重なると、どちらも中途半端になりやすい。

入学の半年以上前に転職して新しい職場に慣れておくか、入学から半年後以降に活動を始めるのが現実的だ。

転職を前向きに検討すべき3つのサイン

「子育て中は転職しない方がいい」という話ではない。以下のサインが出ているなら、動き始める価値がある。

サイン① 職場の状況が健康・生活に直結している

上司からのハラスメント、体調の慢性的な悪化、精神的に限界に近い状態──こうした状況は子どもにも伝わる。「キャリアの遅れは復元可能か」という問いよりも、健康を優先する判断が正しい局面がある。

サイン② 現職では制度的・構造的に解決しない問題がある

給与水準・職種のミスマッチ・業界の将来性など、「現職の中でいくら頑張っても解決しない問題」がある場合。3年後・5年後を自分なりのキャリア軸で描いたときに、現職では到達できないと判断できる場合は転職の動機として有効だ。

サイン③ 転職先・職種に具体的なビジョンがある

「今の会社から逃げたい」ではなく「この業界・この職種でキャリアを作りたい」という明確な方向性がある場合。子育て中の転職活動にかけられる時間は限られる。ビジョンが明確であるほど、短い時間で良い選択ができる。

転職活動を始める前に確認する3つのこと

上司にどう切り出したかなんですけど──という話じゃなくて(笑)、転職前にこの3点を確認しておくことで、後悔するリスクを大幅に減らせる。

① 保育園:退園リスクを自治体に事前確認する

転職で無職期間が生じる場合、自治体の保育担当課に「転職活動中の在園継続は可能か」「猶予期間はどのくらいか」を事前に確認する。自治体ごとに対応が異なるため、ネット情報より窓口への直接確認が確実だ。内定が出てから退職するのが大原則。転職先の就業開始日と退職日の間に空白期間を作らないよう日程調整する。

② 育休・給付金:2人目の計画も含めて確認する

2人目の育休を考えているなら、転職後に育休給付金を受給できる条件(前職退職から1年以内・失業手当未受給・新職場での被保険者期間通算)を確認しておく。転職エージェントよりも社労士に相談するのが確実だ。また、転職先の就業規則に「入社1年未満は育休不可」とする古い規定が残っていないかも確認する。

③ 時短・残業免除:転職先でも使えるか確認する

選考の終盤か内定後に、時短勤務・残業免除・テレワークの利用実績を確認する。「法律上は使えます」と言われても、実際に使いやすい職場文化かどうかは別の話だ。口コミサイトや面接時の雰囲気、直属の上司のコミュニケーションスタイルから判断する材料を集める。

「辞めない」という選択の価値も、きちんと考える

育休3ヶ月目に同期の昇格を見て焦った夜、妻と「この育休で何を捨てていて、何を得ているか」をノートに書き出した。その中で気づいたのは、転職を考える前に「現職の制度を最大限使い切っているか」という問いだった。

時短勤務・テレワーク・残業免除・フレックスの組み合わせ──これらは転職先ではゼロから積み上げる必要があるが、現職では既に使える状態にある。制度を使い切った上で「それでも足りない」と判断するのと、制度を使い切らないまま転職するのでは、後から振り返ったときの評価が違う。

キャリアの遅れが「復元可能か」を4項目(評価期間・昇進ルートの年齢制限・法的保護の有無・成果を出す仕組みの有無)で確認するチェックリストを自分なりに作り、「短期の遅れは復元可能、子と妻と過ごす時間は復元不能」という結論を出した。子育て中の転職を検討するなら、「現職でできることをやり切ったか」を先に問うてみてほしい。

よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に転職活動をするのは法律上問題ない?

法律上は問題ありません。ただし、会社によっては就業規則で就職活動を制限している場合があります。育休明け・復職後に転職活動を始めるケースが現実的には多いです。

Q2. 転職したら保育園を退園になる?

転職だけで退園が決まるわけではありません。「就労の継続」が証明されれば在園継続できます。ただし退職から転職先の就業開始まで空白期間がある場合は、自治体によって退園を求められることがあります。自治体の保育担当課への事前確認が必須です。

Q3. 転職後、新しい職場で育休は取れる?

2023年以降、入社直後でも法律上は育休申請が可能です(新規の「入社1年未満は育休不可」とする労使協定は原則廃止)。ただし育児休業給付金を受け取るには雇用保険の被保険者期間12か月以上が必要。前職の期間との通算要件(前職退職から1年以内・失業手当未受給)を確認してください。

Q4. 時短勤務中の転職活動はキャリア評価に影響する?

時短勤務中であることは転職で不利になりません。重要なのは「時短勤務の制約の中でどんな成果を出したか」の言語化です。朝のタスク宣言・退勤前の進捗報告・四半期の成果棚卸しといった成果の見せ方を整理してから活動すると、面接での評価が変わります。

Q5. 子育て中の転職で後悔しやすいパターンは?

「現職の制度を使い切らないまま、感情的な不満で転職を決める」パターンが最も多いです。時短勤務義務期間(3歳未満)や残業免除(就学前まで)は現職で守られている保護。これらが使えるうちに現職環境の改善を試みてから、それでも限界なら転職を検討するのが後悔を減らします。

参考情報

  • 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」(2025年改正版)
  • 厚生労働省「育児・介護休業法 令和7年(2025年)10月1日施行のポイント」
  • 東京すくすく「育休中の転職で、娘が保育園を退園させられた──23区で対応バラバラ」(2022年)
  • マネーフォワード クラウド給与「転職して1年未満だと育休は取れない?伝え方や給付金について解説」(2026年)
  • リアルミーキャリア「保育園申し込み後に転職すると保育園内定に影響する?」