育休から復職して最初の数ヶ月、仕事のリズムが戻ってきたかな……と思った矢先に、ふとSNSを開いて心がザワつく瞬間ってありませんか。

実際に育休取った身として言うと、僕にとってそれは育休3ヶ月目の深夜でした。同期の「主任に昇格しました!」という投稿。おめでとう、と思う自分と、腹の底がヒヤッとする自分が同時にいて、その夜は眠れませんでした。

男性育休取得者の86%が「復職後の壁」を感じている

2025年のwithwork調査によると、男性育休取得者の86%が復職後に仕事と家庭の両立に難しさを感じたことがあると回答しています。さらに衝撃的なのは、96%が「より育児と両立しやすい環境を求めて転職した/検討した」という数字です。

つまり、復職後に「このままでいいのか」とモヤモヤするのは、あなただけではない。ほぼ全員が通る道なんです。

僕の場合、朝6時に起きて長男の朝食を作り、8時半までに武蔵小杉の保育園に送り届けて出社、17時に退勤してお迎え――この生活リズム自体は回り始めていました。問題は、頭の中で回り続ける「取り残された感」のほうでした。

キャリア不安の正体は「比較」ではなく「喪失の錯覚」

冷静に振り返ると、僕が怖かったのは「同期より遅れること」ではありませんでした。本当に怖かったのは、「育休を取った自分の選択が間違いだったかもしれない」と思うことでした。

これ、育休に限らず転職や留学でキャリアを中断した人にも共通する心理だと思います。「あの選択をしなければ、今ごろ……」というタラレバが、深夜のSNSで増幅される。

でも実際には、同期と僕では「人生で優先したもの」が違っただけ。上司にどう切り出したかなんですけど、復職面談のとき「17時以降のMTGには参加できません」と先に明言したら、逆に上司から「制約がわかれば調整しやすい」と言ってもらえた。制約の明示が信頼につながるという体験は、育休を取らなければ得られなかったものです。

「不安の言語化」5ステップ──妻と書き出した夜のこと

同期のSNSを見て眠れなくなった翌日、妻と話し合って始めたのがこの5ステップです。

ステップ1:不安を「事実」と「想像」に分ける

事実:同期が主任に昇格した。想像:自分はもう昇格できない。

書き出してみると、不安の8割は「想像」でした。

ステップ2:育休で「捨てたもの」を書き出す

半年間の昇格機会、プロジェクトリーダー経験、同期との横並び感。これは確かに捨てた。目を逸らさず認めることが大事でした。

ステップ3:育休で「得たもの」を書き出す

長男の初めての寝返り・つかまり立ちに立ち会えたこと。妻との役割分担の再設計。「この人となら乗り越えられる」という夫婦の信頼貯金。子と妻と過ごした半年は復元不能。短期の出世は復元可能。この整理で気持ちが一段落ちました。

ステップ4:「3年後の理想」を描く

「来月の評価」ではなく「3年後にどうありたいか」で考えると、景色が変わります。僕の場合は「長男が小学校に上がるまでに、時短でも成果を出せるスキルセットを持っていること」でした。

ステップ5:不安を「行動リスト」に変換する

漠然とした不安のままにせず、「来週できる具体的なアクション」に変換します。僕の場合は「時短でも参加できる社内勉強会を月1つ見つける」「上司との1on1で半期目標をすり合わせる」でした。

時短復職の「期待値の低さ」は武器にもなる

時短復職のリアルは、意外なところにもあります。復職初日、上司から「思ったより仕事できるね」と言われたんです。正直、複雑でした。裏を返せば、男性の時短勤務に対する期待値がそれだけ低いということ。

でも見方を変えれば、期待値が低い分、普通にやるだけで評価が上振れる。一方で、重要プロジェクトのアサインなど「キャリア機会」は低く見積もられがちなので、そこは自分から手を挙げる必要があります。

僕は保育園の送迎時に出会った他のパパたちとの立ち話で、同じような悩みを抱えている人が多いことを知りました。「うちも時短で、でも評価面談ではフルタイムに戻してから考えようって言われた」という声。こういうリアルな情報交換が、自分だけじゃないという安心感につながります。

2025年の法改正で「男性育休の取りやすさ」は確実に進んでいる

制度面の追い風もあります。2025年4月から、従業員300人超の企業にも男性育休取得率の公表が義務化されました。また、両親がともに14日以上育休を取得した場合、給付金が最大28日間、手取り約10割相当に引き上げられています。

令和5年度の男性育休取得率は30.1%。数年前の一桁台を思えば大きな変化ですが、まだ7割の男性が取得していない現実もある。だからこそ、復職後のキャリア不安について「取った人」がリアルを語ることに意味があると思っています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 育休を取ったら本当に昇格に響きますか?

法律上、育休取得を理由とした不利益な取り扱い(降格・減給・昇格見送りなど)は育児・介護休業法で禁止されています。ただし、評価期間中の実績が物理的に少なくなるため、短期的にはタイミングがずれる可能性はあります。重要なのは復職後に目標を上司とすり合わせ、限られた時間で成果を出す仕組みを作ることです。

Q2. 復職後に動悸やめまいなどの身体症状が出たらどうすべきですか?

育休復職後のメンタル不調は珍しくありません。SmartHRの公認心理師の解説によると、「表面上慣れるまで3ヶ月、本当に慣れるまで1年」が目安。身体症状が出た段階で、まずは産業医に相談しましょう。産業医を通じて上司に業務量を調整してもらうことも可能です。

Q3. 同期との昇格差はどのくらいで取り戻せますか?

業界・企業によりますが、半年〜1年の育休であれば、復職後2〜3年でキャッチアップしているケースが多いです。むしろ育休中に得た「限られた時間で優先順位をつける力」が、復職後の生産性向上につながったという声もあります。

Q4. 時短勤務中でもキャリアアップの機会を得るにはどうすればいいですか?

「時短だからアサインしない」という暗黙の判断が起きがちなので、自分から手を挙げることが重要です。復職面談や定期1on1で「こういうプロジェクトに関わりたい」と明言し、制約の中で貢献できる範囲を具体的に示しましょう。

Q5. 育休中に転職活動をするのはアリですか?

法律上は問題ありませんが、育休給付金の受給要件(雇用保険の被保険者であること等)に影響する場合があります。転職先の入社日と育休終了日の兼ね合いも含め、ハローワークや社労士に確認してから動くのが安全です。

参考文献