2026年6月、日銀が政策金利を0.75%から1.0%に引き上げました。1995年以来、実に31年ぶりの水準です。
FP相談でよく聞かれるのが「住宅ローンの返済、結局いくら増えるんですか?」という質問。でも実は、金利上昇は「支出が増える」面だけでなく「預金の利息が増える」面もあるのに、片方しか見ていない家庭がほとんどです。
この記事では、CFPで3児の母である筆者が、自分の家計で実際に試算した「金利1%時代の影響」と、教育資金を守るための点検3ステップを整理します。
金利1%時代、子育て世帯の家計で何が起きている?
「増える支出」──変動金利の住宅ローン
日銀の利上げを受け、2026年8月3日から三菱UFJ銀行・みずほ銀行などの短期プライムレートが2.125%から2.375%に引き上げられます。変動金利の住宅ローンは、この短プラに連動して上がります。
残高3,000万円・残り25年・変動金利で借りている場合、金利が0.25%上がると月々の返済額は約3,500〜4,000円増加します。年間にすると約4.2〜4.8万円の負担増です。
ただし、多くの銀行には「5年ルール」(返済額が5年間変わらない仕組み)があるため、すぐに返済額が上がらない場合もあります。このルールが適用されると返済額は据え置かれますが、利息の割合が増えて元本が減りにくくなる点には注意が必要です。
「増やせる利息」──預金と国債
一方で、子育て世帯にとってプラスの変化もあります。
| 預け先 | 金利(税引前・年率) | 500万円を1年預けた場合の利息 |
|---|---|---|
| メガバンク普通預金(2026年8月〜) | 0.40% | 約20,000円 |
| ネット銀行定期預金(1年) | 1.05〜1.35% | 約52,500〜67,500円 |
| 個人向け国債 変動10年(2026年7月募集) | 1.80% | 約90,000円 |
うちの長女のとき実際に教育資金500万円を普通預金に放置していた時代は、年間利息がたった50円でした(金利0.001%時代)。今は同じ500万円でも預け先を変えるだけで年間7〜9万円の利息がつきます。この差は、毎月の積立に換算すると月6,000〜7,500円分に相当します。
FPが実践する「金利1%時代」の家計点検3ステップ
ステップ1:住宅ローンの「金利タイプ」と「5年ルール」を確認する
まず最初に確認するのは、自分のローンが変動金利か固定金利かです。固定金利なら、日銀の利上げの影響はゼロ。慌てる必要はありません。
変動金利の場合は、以下の3点をチェックしてください。
- 現在の適用金利(借入時の金利ではなく、直近の返済明細に記載された金利)
- 5年ルール・125%ルールの有無(ネット銀行の一部では適用されない場合あり)
- 次回の金利見直し時期(多くの銀行は10月に見直し、翌年1月から反映)
2026年10月に0.25%引き上げが見込まれるため、2027年1月からの返済額増加分をExcel家計簿やスマホの家計簿アプリに先に入力しておくと、「来年の1月に急に返済が増えた!」というパニックを防げます。
ステップ2:教育資金の「預け先」を使う時期で3つに仕分ける
結論から言うと家計の見直しが先、ではあるのですが、住宅ローンの返済増を教育資金の積立から削るのは最悪のパターンです。
むしろ、金利上昇を味方につけて教育資金の利息を増やすことで、返済増をカバーする発想が重要です。
私が実践しているのは、教育資金を使う時期で3つに分ける方法です。
- 1〜2年以内に使う分(入学金・受験費用など)→ ネット銀行の普通預金(0.40〜0.75%)にいつでも引き出せる状態で置く
- 3〜5年先に使う分(中学・高校の入学準備など)→ ネット銀行の定期預金(1.05〜1.35%)で安全に利息を取る
- 5年以上先に使う分(大学費用など)→ 個人向け国債 変動10年(1.80%)で金利上昇に追随しながら運用
個人向け国債は1年間の換金制限があるため、5年以上先の資金に限定するのがポイントです。7月募集分の利率は1.80%。2026年7月31日まで申し込み可能です。
ステップ3:住宅ローンの返済増と利息増を「差し引き」して家計のバランスを確認する
ここが一番大事なステップです。「支出が増える」と「利息が増える」を差し引きして、家計全体でプラスかマイナスかを確認します。
【試算例】子育て世帯(残高3,000万円・教育資金500万円)
| 項目 | 年間の変化 |
|---|---|
| 住宅ローン返済増(金利+0.25%) | ▲約4.5万円 |
| メガバンク普通預金の利息増(0.3%→0.4%) | +約5,000円 |
| 預け先変更(普通預金→国債・定期)の利息増 | +約7万円 |
| 差し引き | +約3万円 |
この試算のように、教育資金の預け先を見直すだけで、住宅ローンの返済増を十分にカバーできるケースが多いのです。FP相談でも、金利上昇で慌てている家庭に預け先の見直しを提案すると、「プラスになるんですか?」と驚かれることがよくあります。
もちろん、住宅ローンの残高が大きい家庭や教育資金が少ない家庭では結果が変わります。自分の家庭の数字で必ず計算してください。
やってはいけない3つのこと
- 「金利が上がったから繰上返済」と焦って教育資金を取り崩す──教育費は使う時期が決まっているため、住宅ローンの利息削減より優先度が高い
- 変動金利から固定金利への借り換えを検討せずに放置する──残高・残期間・今後の金利見通しで判断は変わるため、少なくとも試算だけはやる
- 「5年ルールがあるから大丈夫」と思考停止する──返済額は変わらなくても、利息が増えて元本返済が遅れる構造は進行中
よくある質問(FAQ)
Q1. 日銀の利上げはまだ続きますか?
2026年7月時点では、年内にあと1〜2回の追加利上げが見込まれており、変動金利は2026年末までに1.25%程度まで上昇する予測もあります。ただし経済情勢次第で変わるため、半年に1回は金利動向をチェックするのが現実的です。
Q2. 個人向け国債は途中で換金できますか?
発行から1年経過すれば換金可能です。ただし、直近2回分の利子(税引前)が差し引かれます。元本割れはしないため、教育資金の「安全な置き場所」としては預金と並んで有力です。5年以上先に使う資金であれば、この換金制限はほぼ問題になりません。
Q3. 変動金利の住宅ローン、今から固定に借り換えるべきですか?
一概には言えません。残高が少ない場合(1,500万円以下)や残り期間が10年以下の場合は、変動のまま繰上返済を進めるほうが合理的なケースもあります。借り換えの手数料(数十万円)を考慮して、シミュレーションしてから判断してください。フラット35「子育てプラス」は子ども3人なら当初5年間0.75%引き下げが適用されるため、選択肢に入れる価値があります。
Q4. 教育資金を投資信託(新NISA)で持っている場合、金利上昇の影響はありますか?
金利上昇局面では株式市場に下落圧力がかかりやすいため、5年以内に使う教育資金を新NISAに入れている場合は、段階的に元本保証型(預金・国債)に移す検討をおすすめします。5年以上先の資金であれば、短期の変動に一喜一憂する必要はありません。
まとめ:金利1%時代は「守り」と「攻め」の両面で考える
日銀の利上げは、住宅ローンを抱える子育て世帯にとって負担増の側面がある一方で、教育資金の預け先を見直す絶好のタイミングでもあります。
やるべきことは3つだけ。
- 住宅ローンの金利タイプと次回見直し時期を確認する
- 教育資金を使う時期で3つに分けて預け先を最適化する
- 支出増と利息増を差し引きして、家計全体のバランスを確認する
特にステップ2は、30分あればできる作業です。教育資金が普通預金に入れっぱなしなら、この週末にネット銀行の口座開設と個人向け国債の申し込みを始めてみてください。
参考文献
- 日本銀行「金融政策決定会合の運営」──2026年6月の政策金利引き上げ決定の一次情報
- 財務省「個人向け国債」──変動10年・固定5年・固定3年の最新利率と募集要項
- 住宅金融支援機構「フラット35子育てプラス」──子どもの人数に応じた金利引き下げ制度の詳細
- 全国銀行協会「短期プライムレート推移」──変動金利住宅ローンの基準となる短プラの推移データ





