保育園に通い始めると、子どもの発熱は月に1〜2回やってきます。電話が鳴るたびに「今日はどっちが休む?」と妻とLINEで調整し、気づけば秋には有給の残日数が片手で数えられる状態に──。

時短復職のリアルは、この「休暇が足りない問題」との戦いでもあります。僕自身、育休から時短で復職した1年目、保育園の呼び出しで有給を使い続けた結果、10月には残り4日。妻との間で「私ばっかり休んでる」「俺の有給ももうないんだけど」という不満が出始めていました。

この記事では、有給休暇と子の看護等休暇を「なんとなく」ではなく年間で戦略的に配分する方法を、僕が夫婦で実践した月1棚卸しの仕組みとあわせて3ステップで整理します。

有給と子の看護等休暇、そもそも何が違うのか

まず制度の違いを整理しておきます。混同している方が意外と多いので、ここを押さえるだけで使い方が変わります。

年次有給休暇子の看護等休暇
根拠法労働基準法39条育児・介護休業法16条の2
日数勤続年数に応じて10〜20日/年子1人:年5日、2人以上:年10日
給与有給(全額支給)法律上は無給でもOK(企業により異なる)
取得単位1日・半日・時間単位(労使協定要)1日・時間単位(2021年〜)
対象の子の年齢制限なし小学校3年生修了まで(2025年4月改正)
取得事由自由(理由不要)病気・けが・予防接種・健診・学級閉鎖・入学式/卒園式(2025年4月改正で拡大)

ポイントは「看護等休暇は無給の会社が多い」という点です。厚生労働省の令和5年度雇用均等基本調査によると、子の看護休暇制度がある事業所のうち有給としている割合は約3割にとどまります。無給であれば給与が減るため、多くの家庭が有給休暇を先に使い切ってしまいます。

しかし、これが落とし穴です。有給は万能だからこそ、子どもの看病以外にも使いたい場面が山ほどある。保育園の行事、自分のリフレッシュ、夫婦の記念日。看護等休暇で対応できる場面は看護等休暇に回し、有給は「ここぞ」のために温存する──この発想の転換が、年間の休暇設計の第一歩です。

2025年4月改正で看護等休暇はこう変わった

2025年4月施行の改正育児・介護休業法で、子の看護等休暇は大きく拡充されました。実際に育休取った身として言うと、この改正を知っているかどうかで休暇の使い方はまるで変わります。

主な変更点3つ

  1. 対象年齢の拡大:小学校就学前 → 小学校3年生修了まで(9歳に達する日以後の最初の3月31日まで)
  2. 取得事由の追加:従来の病気・けが・予防接種・健診に加え、感染症による学級閉鎖等入園式・入学式・卒園式が追加
  3. 除外規定の緩和:継続雇用6ヶ月未満の労働者を除外する労使協定が認められなくなり、入社直後でも取得可能に

特に「学級閉鎖」が取得事由に入ったのは大きい。保育園でも感染症の流行でクラス閉鎖になることがあり、これまでは有給で対応するしかなかった場面が看護等休暇でカバーできるようになりました。

ステップ1:看護等休暇を有給より先に使い切るルールを決める

僕が妻と最初に決めたのは、「看護等休暇で対応できる場面は、有給より先に看護等休暇を使う」というシンプルなルールでした。

具体的には以下の振り分けです。

場面使う休暇
子の発熱・病気での看病看護等休暇(優先)
予防接種・健康診断看護等休暇
学級閉鎖・クラス閉鎖看護等休暇
入園式・卒園式看護等休暇
保育園の親子遠足・参観日有給休暇
自分のリフレッシュ有給休暇
家族旅行・帰省有給休暇

看護等休暇が無給の会社の場合、「1日分の給与が減る」ことに抵抗を感じるかもしれません。僕の会社も無給です。でも、看護等休暇は時間単位で取得できるので、半日で済む場面では半日だけ使うことで給与への影響を最小化できます。午前中に病院に連れて行き、午後から出社(またはテレワーク)という使い方であれば、実質4時間分の減額で済みます。

年間5日×夫婦2人で計10日分。これを有給の代わりに先に消化するだけで、有給を10日分温存できる計算です。

ステップ2:月1の夫婦「休暇棚卸しミーティング」を導入する

ルールを決めただけでは、運用は回りません。僕たち夫婦が「これがないと崩壊する」と実感したのが、月末の5分間の休暇棚卸しミーティングです。

棚卸しで共有する3つの数字

  1. 今月の看護等休暇消化日数(パパ/ママそれぞれ)
  2. 今月の有給消化日数(パパ/ママそれぞれ)
  3. 翌月の予定休み(予防接種、保育園行事、出張など)

うちではGoogleスプレッドシートに月ごとの行を作り、「看護等休暇 残○日」「有給 残○日」を夫婦で記録しています。所要時間は月末に5分。子どもが寝たあとにスマホで確認するだけです。

偏りが出たときの調整ルール

僕たちは看護当番制(奇数週パパ・偶数週ママ)を導入していますが、それでも休暇残日数には偏りが出ます。棚卸しで片方の残日数が少なくなっていたら、翌月の当番日数を調整するシンプルなルールにしています。

この仕組みの最大の効果は、不満が感情論ではなく数字ベースの会話になることです。「私ばっかり休んでる気がする」が「今月は僕が3日・妻が1日だから来月は妻の当番を1日増やそう」に変わります。名もなき家事の見える化と同じ構図で、数字にすると冷静に話せます。

ステップ3:季節ごとの「休暇消費カレンダー」を設計する

保育園の感染症には季節パターンがあります。このパターンを知っておくだけで、休暇の使い方にメリハリがつきます。

時期流行しやすい感染症休暇の使い方
4〜6月入園・進級の環境変化による体調不良看護等休暇を中心に消化開始
7〜9月手足口病・ヘルパンギーナ・プール熱看護等休暇を引き続き消化。夏休み(お盆帰省)は有給で
10〜11月RSウイルス・胃腸炎の立ち上がり看護等休暇を使い切る時期。有給温存を意識
12〜3月インフルエンザ・ノロウイルス・溶連菌有給を主力に投入。学級閉鎖は看護等休暇が使えるか確認

僕の実感としては、保育園1年目は年間で10回前後の呼び出しがありました。特に冬場(12〜2月)に集中します。夏までに看護等休暇を計画的に使い、有給を冬に温存するのが、1年を通して休暇が枯渇しないコツです。

朝6時に起きて子どもの朝食を作り、保育園に送って出社し、17時に退勤してお迎えに行く──この毎日のルーティンの中で、突発的な呼び出しが入ると一気にスケジュールが崩壊します。だからこそ、休暇は「その場しのぎ」ではなく年間でマネジメントする視点が必要なんです。

実践して見えた3つの気づき

1. 「無給だから損」は短期的な視点

看護等休暇が無給の場合、1日あたりの減収は気になります。でも、有給を秋に使い果たして年末の家族旅行や自分のリフレッシュに使えなくなるほうが、長期的には精神的ダメージが大きい。看護等休暇の「無給」は、有給を温存するための保険料だと割り切っています。

2. 半日単位の取得が消化効率を上げる

子どもの発熱で丸1日休む必要がないケースは意外と多い。朝イチで小児科に行って午後から出社、あるいは午前だけテレワークで午後に妻と交代する「半日シフト」を組めば、看護等休暇5日分を実質10回分として使えます。2025年改正で時間単位の取得が維持されているので、2時間だけ看護等休暇を使って病院に連れて行くという使い方も可能です。

3. 数字にすると夫婦の会話が変わる

月末にスプレッドシートで看護回数と休暇消化数を夫婦で確認するようになって、一番変わったのは会話の質です。「また私ばっかり」という不満が「今月は僕が2日多いから来月は調整しよう」という事実ベースの話し合いに変わりました。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子の看護等休暇が無給の場合、会社に有給化を交渉できますか?

法律上、企業には看護等休暇を有給にする義務はありませんが、福利厚生として有給化している企業もあります。2025年4月の改正を機に、就業規則を確認したうえで人事に「有給化の予定はあるか」と聞いてみる価値はあります。厚生労働省は「子の看護等休暇の有給化」に取り組む企業向けの助成金制度も設けています。

Q2. パートや契約社員でも看護等休暇は取得できますか?

2025年4月の改正で、継続雇用6ヶ月未満の労働者を除外する労使協定が認められなくなりました。雇用形態に関わらず、入社直後から取得可能です。ただし、週の所定労働日数が2日以下の労働者は労使協定で除外できます。

Q3. 看護等休暇は子ども1人なら年5日が上限?増やす方法はありますか?

法定では子1人で年5日、2人以上で年10日が上限です。ただし、企業が独自に上乗せしているケースもあるので、就業規則を確認してください。また、養育両立支援休暇(2025年10月施行の柔軟措置の一つとして導入する企業あり)が別枠で使える場合もあります。

Q4. 夫婦ともにフルタイムの場合、看護等休暇は合計10日使えるのですか?

はい。子の看護等休暇は労働者一人ひとりに付与される権利なので、夫婦それぞれが5日ずつ(子が1人の場合)、合計10日取得できます。「どちらか一方しか取れない」という制限はありません。

Q5. 看護等休暇の申請に診断書は必要ですか?

法律上、診断書の提出義務はありません。厚生労働省も事業主に対して「証明書類の提出を求める場合でも、購入した薬の領収書など簡易なもので足りるようにすべき」としています。過度な証明書類を要求する会社には、厚生労働省のガイドラインを根拠に交渉できます。

参考文献