「七五三のお祝い金って、全部子どもに渡した方がいいですか。それとも貯金にした方がいい?」

FP相談でよく聞かれるのが、このパターンだ。七五三は3歳・5歳・7歳の節目。祖父母や親戚からまとまったお祝い金をいただく機会でもある。1人あたり5,000円から3万円と金額に幅があって、複数の方からいただくと合計が10万円を超えることも珍しくない。

「全額貯金」にするのが堅実に見えて、実は金銭教育の大きなチャンスを一つ逃している。かといって「全部渡す」と、3歳や5歳の子が大金を手元に持つことになって不安だ。うちの長女のとき実際に一晩迷った。FPとしての知識と「3人育てた親」のリアルな感覚の間で、どっちが正解か分からなくなったのだ。

たどり着いたのが、年齢に応じた3分割設計だった。七五三という節目を、写真の思い出だけでなく「子どものお金の教室」にするFP流の方法を3ステップで解説する。

なぜ「全額貯金」だと惜しいのか

七五三のお祝い金を親がそのまま貯金口座に入れてしまうと、子どもには「お祝いのお金がどこかへ消えた」という感覚しか残らない。

7歳の子どもがお祝い袋を受け取る瞬間を想像してほしい。あの瞬間、子どもはリアルに「自分が大切にされている」と感じている。そこで「はい、これはおじいちゃんからだよ、大事に貯めておこうね」と言いながら親が通帳に入れると、子どもにとっては「自分のお金なのに自分では使えない」という経験になる。

全部じゃなくていい。10〜30%だけでも子どもが自分で使い道を考える体験を入れることで、七五三は節目の行事の意味が一つ厚くなる。金銭広報中央委員会の調査でも、小学生以上の子どもが「お金の管理を自分でしている」と回答する割合は、親が意図的に機会を作った家庭で高いことが示されている。

逆に「全部渡す」のも問題だ。7歳の子どもが手元に1万円を持てば、当日のうちにガチャやお菓子に全部使い切ってしまうケースは珍しくない。金銭感覚が育つどころか、大金を使い果たす経験を積ませることになる。

Step 1:お祝い金を子どもの前で「見える化」する

七五三の当日夜か翌日、家に帰ってからお祝い袋を子どもと一緒に開ける。合計金額を声に出して確認して、「これ全部、〇〇ちゃんへのお祝いだよ」と伝える。

3歳では金額の意味はほとんどわからない。それでも「数えてみようか」と一緒にお札やコインを並べるだけで、お金に触れる体験になる。5歳ならある程度数えられる。7歳なら「15,000円あるね、どう使おうか」と具体的な対話ができる。

ここで大切なのは「このお金は全部好きに使っていいよ」と言わないことだ。「一緒に使い方を決めよう」というスタンスが、次のステップをうまく機能させる。お金を「もらったもの」から「一緒に考えるもの」に変える、この小さな言葉の違いが積み重なって金銭感覚になる。

Step 2:年齢別の「3分割」で配分を設計する

お祝い金を①今使う分、②子ども名義の積立、③親が管理する将来資金の3つに分ける。年齢が上がるほど、子どもが自分で決められる割合を増やしていく。

七五三の年齢 ①今使う ②子どもの積立 ③将来資金(親管理)
3歳 10% 20% 70%
5歳 20% 30% 50%
7歳 30% 40% 30%

たとえば7歳で合計1万5,000円のお祝い金をいただいた場合、①4,500円、②6,000円、③4,500円という配分になる。数字にすると迷わなくて済むのが3分割のいいところだ。

①の今使う分は、子どもが欲しいものを選んでいい。ただし「もらった当日には決めない」というルールを一つだけ加えると効果的だ。欲しいと思った翌日でもやっぱり欲しいかどうか、一晩考える習慣が「衝動と選択を分ける」最初のトレーニングになる。

②の積立は、月々のお小遣いとは別口座に入れる。子どもの名義で通帳を作り、子どもが残高を確認できるようにしておく。七五三・誕生日・お年玉で積み上がっていく数字を見ることで、「貯まっていく実感」が育つ。大事なのは金額より、通帳を一緒に見る時間だ。

③は親が学資保険や積立口座に充てる。「これは将来のあなたが使うお金だよ」と伝えるだけでいい。子どもが完全に納得するかどうかより、「自分には将来のための貯えがある」という感覚を小さいうちから持たせることに意味がある。

Step 3:お小遣い制度に「記念配当」として組み込む

お小遣い帳を使っているご家庭なら、七五三のお祝い金を「記念配当」として記録に残そう。月々の定例支給とは別に、「七五三:15,000円受領 → 4,500円を使い分として管理」というように書く。

これをやっておくと、翌年の誕生日やお正月のお年玉のときも同じルールで動かせる。「記念日にもらうお金は3分割」という家庭ルールが習慣化されると、子ども自身が「今度のお年玉も分けようかな」と言い出すようになる。我が家では実際にそうなった。5歳の次女が七五三の後に「通帳に入れてから使う分決めたい」と言ったとき、内心かなり嬉しかった。

お小遣い契約書を使っている場合は、「臨時収入のルール」に七五三と誕生日を明記しておくと後々楽だ。「七五三・誕生日・お年玉は3分割ルールで管理する(比率は年齢に応じて親子で決定)」という一行を加えるだけでいい。年に一度の見直しのときに比率を更新すれば、ルールが成長に合わせて変わっていく。

よくある質問

Q1. 3歳はお金の概念が薄いし、3分割を説明しても分からないのでは?

完全な理解は必要ない。「おじいちゃんがくれたお祝いのお金だよ」と言いながら一緒にお金を触る体験が残ればいい。3歳での説明は「親が丁寧にお金を扱っている姿を見せること」に価値がある。理解は5歳・7歳で積み重なっていく。

Q2. 祖父母が「全部子どもに使って」と言うのに、教育資金に充てていいの?

「子どものために大切に使わせていただきます」で十分だ。教育資金への積立も、十分に「子どものための使い方」だ。祖父母の気持ちを尊重しながら、使い方の決定権は親にある。具体的な使い方を後日報告すると喜ばれることが多い。

Q3. きょうだいで七五三の年齢が違うと配分額も違ってくる。不公平感はどう対処する?

配分の「比率」が同じなら公平だ。7歳の長女と3歳の次女で金額が違っても、「今使う分の割合は年齢によって決まる」と説明することでルールの一貫性が保てる。きょうだい全員に同じルールを適用しているかどうかが、子どもの公平感には何より効く。

Q4. お祝い金が3,000円と少額のときも3分割にすべき?

少額なら①今使う分と②積立の2分割でいい。3,000円なら「1,000円は好きなもの、2,000円は積立」のようにシンプルにまとめる。複雑なルールは続かない。金額が少ないほどシンプルが正解で、仕組みの習慣化が目的だから。

Q5. お小遣い帳をつけていない子どもへはどう記録すればいい?

七五三をきっかけにお小遣い帳を始めるのもいい。「七五三でいただいた〇〇円」が最初の記念日記録になって、帳簿を始めるモチベーションになりやすい。最初の1ページが書けると、続く確率がぐっと上がる。

参考情報

  • 金融広報中央委員会「子どものくらしとお金に関する調査(第4回)」(2022年)
  • マイナビ子育て「2026年お年玉調査──物価高が影響・予算総額は24,039円」(2026年1月)
  • 学研「令和のお小遣い・臨時収入の管理実態」kids.gakken.co.jp(2023年12月)