FP相談でよく聞かれるのが「奨学金は金利が安いから大丈夫ですよね?」という質問です。5年前ならその通りでした。ところが2026年の今、JASSO第二種奨学金の利率固定方式は2.9%超にまで上昇し、国の教育ローンも4.05%に達しています。

「低金利だから借りればいい」──その前提で組んだ教育資金プランは、もう通用しません。結論から言うと家計の見直しが先です。この記事では、金利急騰の実態と、借りる前に親ができる3つのステップ、さらに奨学金と教育ローンの併用戦略を整理します。

奨学金の金利はどこまで上がったのか──4年間の推移を数字で確認

JASSO第二種奨学金(有利子)の利率固定方式は、貸与終了時に決まった金利が返還完了まで変わらない方式です。その推移を見てみましょう。

時期利率固定方式(基本月額)
2022年3月0.369%
2023年3月0.905%
2024年3月1.340%
2025年3月1.830%
2026年1月2.512%
2026年5月2.922%

わずか4年で約8倍です。上限の3.0%が目前に迫っています。

これを返済額に換算すると、月額8万円×4年間=総額384万円を20年返済した場合、利息は以下のとおりです。

  • 金利0.4%(2022年水準):利息 約15万円 → 月々 約16,700円
  • 金利1.6%(2024年水準):利息 約63万円 → 月々 約18,600円
  • 金利2.9%(2026年水準):利息 約119万円 → 月々 約20,900円

金利0.4%と2.9%では、利息差は約104万円、月々の返済差は約4,200円になります。「たかが数%」ではありません。これは子どもが20年間背負う金額です。

教育ローンとの金利差が「約1%」に縮小した意味

国の教育ローン(日本政策金融公庫)の金利は、2026年7月時点で年4.05%です。奨学金の利率固定方式が2.9%超ですから、その差は約1%にまで縮まりました。

5年前は「まず奨学金、足りなければ教育ローン」という優先順位が鉄板でした。金利差が3%以上あったからです。しかし金利差が1%に縮まった今、それぞれの特性を理解したうえで組み合わせて使う発想が必要です。

比較項目奨学金(JASSO第二種)国の教育ローン
債務者子ども本人保護者
金利(2026年7月)2.9%超(利率固定)4.05%
在学中の利息なし(無利息)発生する
受取タイミング入学後に毎月振込入学前に一括
所得制限あり(緩やか)あり(上限790万円等)
返済開始卒業後借入翌月(在学中は利息のみ可)

ここで見落とされがちなのが、奨学金の在学中無利息というメリットです。金利の数字だけで比べると差は約1%ですが、4年間の在学中に利息が一切かからないぶん、実質的な負担差はもっと大きくなります。うちの長女のとき実際に試算してみたところ、384万円を4年間借りた場合、教育ローンなら在学中だけで利息が約60万円かかる計算でした。この差は金利の数字以上に家計に効きます。

「借りればいい」の前に──親ができる教育資金準備3ステップ

金利が上がった今こそ、「借りる額を減らす」ことが最大の防衛策です。以下の3ステップは、FP相談で3年以上教育資金の積立を継続できている家庭に共通するパターンです。

ステップ1:児童手当を専用口座に分離する

児童手当の18年間総額は約234万円です。生活費口座に振り込まれたまま「とりあえず貯金」では、気づかないうちに溶けていきます。

やることはシンプルです。児童手当の振込先を教育資金専用口座に変更するだけ。これだけで18年間に234万円が確実に積み上がります。すでに途中からでも、残りの期間分は確保できます。

234万円あれば、奨学金384万円のうち約6割をカバーできます。借入額が150万円に減れば、金利2.9%でも利息は約47万円。384万円まるごと借りる場合の約119万円と比べて約72万円の差です。

ステップ2:新NISAで月1〜2万円の積立を始める

児童手当に加えて、月1〜2万円を新NISAのつみたて投資枠で積み立てると、教育資金の選択肢が大きく広がります。

  • 月1.5万円 × 18年間 × 年利3%想定 = 約430万円
  • 月1.5万円 × 18年間 × 年利5%想定 = 約524万円

児童手当234万円と合わせれば、664万〜758万円。私立文系4年間の学費約450万円もカバーできる水準です。

ただし、5年以内に使う教育費は元本保証型(預貯金・個人向け国債)で管理してください。新NISAは「使うまでに5年以上ある資金」に限定するのが鉄則です。朝5時に起きてExcel家計簿を開く習慣のある私でも、相場が下がった朝は心臓に悪いですから。

ステップ3:高2の冬までに家族で資金計画を共有する

高2の冬は、受験校が絞られ始めるタイミングです。ここで以下を家族で共有します。

  1. 教育資金マップの現在地:預貯金・NISA・学資保険、それぞれいくら貯まっているか
  2. 志望校の費用一覧:授業料+入学金+施設費+受験費用の概算
  3. 不足額と調達方法:奨学金・教育ローン・祖父母援助、どの手段をいくら使うか

私のFP相談でも、高2冬に家族会議をした家庭としなかった家庭では、入学直前の慌て方がまるで違います。数字を一覧にして見せた瞬間に「ああ、足りるんだ」か「ここを埋めればいいんだ」と、焦りが具体的な行動に変わります。

奨学金×教育ローンの「併用戦略」──入学金は教育ローンで橋渡し

奨学金の最大の弱点は、入学前には受け取れないことです。合格発表から入学金の納付期限は2〜3週間しかありません。ここで教育ローンの出番です。

現実的な併用パターン

  1. 入学金+前期授業料(合計約100万円)を国の教育ローンで借入
  2. 入学後の授業料・生活費を奨学金(月額5〜8万円)で賄う
  3. 奨学金の振込が安定したら、教育ローンを繰上返済

この方法なら、教育ローンの高い金利(4.05%)の適用期間を最短に抑えられます。教育ローンの借入期間が6カ月なら、100万円に対する利息は約2万円。入学金の立替費用としては現実的な範囲です。

併用時の注意点

  • 教育ローンは所得制限あり(子1人で年収790万円以下など)。事前に日本政策金融公庫のサイトで確認を
  • 奨学金の第一種(無利子)を優先し、不足分を第二種で補う
  • 利率固定方式と利率見直し方式の選択は、金利上昇局面では固定方式が安全(ただし上限3.0%に近い水準では見直し方式の検討余地あり)
  • 子どもが3人以上の世帯は教育ローンの金利0.4%優遇(年収500万円以下)を必ず確認

金利2.9%で借りた場合の返済シミュレーション

最後に、借入額別の月々の返済額を試算しておきます(金利2.9%・20年返済・元利均等)。

借入額月々の返済額返済総額うち利息
150万円約8,200円約196万円約46万円
240万円約13,100円約314万円約74万円
384万円約20,900円約502万円約118万円

借入額を384万円から150万円に減らすだけで、利息が約72万円減ります。児童手当を専用口座に入れるだけで達成できる数字です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 奨学金の金利はまだ上がりますか?

JASSOの第二種奨学金は利率固定方式・見直し方式ともに年3.0%が上限です。2026年5月時点で基本月額の利率固定が2.922%と上限目前まで来ています。日銀の金融政策次第では上限に張り付く可能性があります。

Q2. 利率固定方式と利率見直し方式、どちらを選ぶべきですか?

利率固定方式は返済完了まで金利が変わらないため、金利上昇局面では安心感があります。一方、利率見直し方式は5年ごとに金利が見直されるため、将来金利が下がれば得になります。2026年時点では固定方式が2.9%超と上限に近いため、「これ以上はほぼ上がらない固定」か「下がる可能性に賭ける見直し」か、家庭の方針で判断してください。

Q3. 奨学金と教育ローンは本当に併用できますか?

併用可能です。日本政策金融公庫も公式サイトで奨学金との併用を案内しています。入学金など奨学金では間に合わない費用を教育ローンで橋渡しし、奨学金の振込開始後に繰上返済する方法が効率的です。

Q4. 子どもが3人いますが、教育ローンの金利優遇はありますか?

子ども3人以上で世帯年収500万円(所得356万円)以下の場合、国の教育ローンは金利0.4%の優遇があります。2026年7月時点なら4.05%→3.65%です。母子・父子家庭も同様の優遇があるため、該当する方は必ず確認してください。

Q5. 児童手当だけで教育資金は足りますか?

児童手当18年間の総額は約234万円で、国公立大学4年間の授業料(約257万円、2026年上限額ベース)にはやや届きません。月1万円の上乗せ積立を併用すれば、合計約450万円となり私立文系にも対応できる水準になります。

参考文献